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スウィンギング・ロンドン|須川まきこ《1》|クイーン・オブ・ハートの鼓動をきいて

会場風景(以下同)

 華々しく時代を一新し、自らの眩しさによって神話と化したブランド〈BIBA〉。神話を作りあげたのは、ショップに並んだ伝説を、選び取り、身に纏った女の子たち。

 最新作のバッグ、オリエンタルな髪留め、愛用の仮面と羽根飾り。ごちゃまぜな懐古主義が、部屋を舞い踊る。

 モダンの終焉を予見したバーバラ・フラニッキが作り上げた王国〈BIBA〉、ついたてさえない試着室は、毎日が盛大なパーティーのようだっただろうか。人間も衣服も、もみくちゃに、生身をもった物質へと一体となりながら。

 首筋をなぞるレースに、大ぶりな花々で、自身を完璧に飾りあげた、蝶々の女王。自由気ままな猫たちがのどを鳴らす。

 パラソルに揺れるダイヤ、クローバー、エース…。4つの中でもなにより重要なのはハート。愛してあげるわ。トランプのカードをめくれば――次の瞬間にはもういないけど。

 ピンク色が夢のように積み重なるやわらかな世界。凛とした瞳に、盛り上がった髪、炎のように逆立つリボン。

 ファッションに身を包む前の無防備さのなかにある、しなやかな鋭さが見事に描かれた一作。

 須川さまの繊細な筆致で浮かび上がる、耽美でロマンティックな女の子たち。伝説はいつも小さな心臓を打ち付けている。

参考文献|長澤均 (2006) 『BIBA Swingin’ London 1965-1974』 ブルース・インターアクションズ

須川まきこ|イラストレーター →Twitter
京都造形芸術短期大学専攻科卒業後、ローマでの個展をはじめ、国内外の企画展に多数参加。紀の国トレイナートのアート祭では南部駅の駅舎に絵を描きJR西日本公認アーティスト駅長に任命。自身も義足であり、義足のファッションショーでは衣装デザインも担当する。得意のモチーフであるランジェリーブランドとのコラボレーション展示では女性のポートレイトスタイル画も描く。画集「Lady Amputee in powder Room」「Melting」「Lace Queen」「ニーとメメ」がある。

維月 楓|詩人・英米文学研究者・翻訳家 →Twitter
幼少期より言葉が織りなす世界に魅了され、現在は詩作を行いながら英米文学の研究を行う。古今東西の女性詩人の作品を読み解くことを通して、彼女たちの人生の軌跡に敬愛を捧げている。また、モーヴ街の図書館《モーヴ・アブサン・ブック・クラブ》では司書を務めている。



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作家名|須川まきこ
作品名|London Night

ペン・アクリル絵の具・ケント紙
作品サイズ|28cm×33cm 
額込サイズ|34.5cm×42cm
制作年|2022年(新作)

作家名|須川まきこ
作品名|cat of the party

ペン・アクリル絵の具・ケント紙
作品サイズ|32cm×22cm
額込サイズ|37.5cm×28.5cm
制作年|2022年(新作)

作家名|須川まきこ
作品名|ユニオンジャックのショーツ

ペン・アクリル絵の具・ケント紙
作品サイズ|20cm×15cm
額込サイズ|29.7cm×21cm
制作年|2022年(新作)

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