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ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 4|大いなる遺産《2》

day4_大いなる遺産_原文冒頭

『大いなる遺産』あらすじ

両親のいないピップは、年の離れた姉とその夫で鍛冶屋のジョーと暮らしていた。クリスマス・イブに、ピップは一人の脱獄囚に遭遇するが、その男は再び捕えられる。それからしばらくしてピップはミス・ハヴィシャムの屋敷に連れていかれる。そこでは、ピップの運命を変える出会いが待っていた。

 もうしばらくサティス荘に滞在します。

 時が降り積もり、屋敷全体が灰モーヴ色で覆われている奥の一室で、画家・横井まい子さまが描く二人の女性が、現実から遊離した精霊の佇まいで寄り添っていました。

day4_大いなる遺産_地図_横井さま

day4_大いなる遺産_横井さま

横井まい子 | 画家 →HP
少年や少女の姿を通して自然や物語を絵に表したいと思い描いています。2005年より個展やグループ展での作品発表をしております。2018年マリアの心臓(銀座)、アサヒギャラリー(甲府)にて個展。

00_ツアー案内_文と訳

エステラという鏡像
 ミス・ハヴィシャムが幼いエステラを養子に迎えたのは、元々は自分が経験したような不幸から彼女を救ってあげたいという気持ちからであった。ところが、エステラが成長して美しくなっていくことに気づくと、彼女はエステラを男に復讐するための道具として育てるようになる。

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 ピップはまさにその残酷な実験台として選ばれた少年だった。ミス・ハヴィシャムは、エステラがいかにピップや他の男たちの心をもてあそび、傷つけるかを見ては、残忍な喜びを感じていた。子供のピップがサティス荘を訪ねた際にも、エステラを復讐の道具として育てることに熱心な様子を見せ、彼女の胸元や美しい髪に自分の宝石を合わせては、それが引き立てる効果を確認していた。

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 しかし、呪いのようなその努力は、ミス・ハヴィシャムの傷ついた心と表裏一体であったはずである。本当は、自分を裏切った男に愛されることを望んでいたミス・ハヴィシャムは、エステラを使って復讐をしながらも、彼女が愛されること自体にも執着しているようである。

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 ピップは、ミス・ハヴィシャムの言う愛という言葉に呪いの響きを感じ取るが、ミス・ハヴィシャムにとって、その二つは切っても切れない関係にあったのかもしれない。彼女の復讐は、まず愛されなければ意味がないというものであった。ミス・ハヴィシャムは自身の復讐心を満たすだけでなく、愛されたいという切実な思いごとエステラに託すことで、決して癒えることのない心の傷を慰めていたのだろうか。

熊谷めぐみ | 立教大学大学院博士後期課程在籍・ヴィクトリア朝文学 →Blog
子供の頃『名探偵コナン』に夢中になり、その影響でシャーロック・ホームズ作品にたどり着く。そこからヴィクトリア朝に興味を持ち、大学の授業でディケンズの『互いの友』と運命的な出会い。会社員時代を経て、現在大学院でディケンズを研究する傍ら、その魅力を伝えるべく布教活動に励む。



00_通販対象作品

作家名|横井まい子

作品名|鏡の中のヴェール


作品の題材|大いなる遺産

鉛筆・
透明水彩・アイボリーケント
作品サイズ| 18.5cm×26cm

額込みサイズ|26cm×32cm

制作年|2020年(新作)


横井さま_大いなる遺産

横井さま_大いなる遺産_額

Text|KIRI to RIBBON

 ミス・ハヴィシャムのウェディングドレスの白を写した空間から、美の冷気が滲んでくるように、あるいは静止した時の牢獄から、止められない時の囁きがもれくるように——まるで紙の奥から絵柄を浮かび上がらせる画筆で描かれた、画家・横井まい子さまの極めて精妙な一作です。

 ここに存在するのは、鏡を隔てたふたつの時間。鏡の向こう側では、時は動き続け、ミス・ハヴィシャムとエステラが双子のように戯れ、幸せなひとときを過ごしています。
 しかし鏡の手前であるこちら側では、ミス・ハヴィシャムは過酷な運命を生き、それにより止められた時の残酷が屋敷の隅々にまで行き渡っているのです。

 鏡が持つ二つの世界を行き来しながら、確かに存在した二人の幸せなひとときをとらえる横井さまの霊妙な画筆。その後の運命が遠雷のように、鏡の奥に響いています。

★横井まい子さまの他の作品★

★作品販売★

通販期間が当初の告知より変更になりました


12月7日(月)23時〜販売スタート

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本展のオンライン開催方法と作品販売については

以下をご高覧ください

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