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ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 1|クリスマス・キャロル《3》


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『クリスマス・キャロル』あらすじ

ロンドン、クリスマス・イブの夜。強欲で人間嫌いなスクルージの前に、かつての相棒マーレイの幽霊が現れる。マーレイの予告通りに現れた、過去・現在・未来のクリスマスを象徴する三人の精霊に導かれて、スクルージは時を超えた旅に出る。

  ツアーDAY 1最後の観光となります。夜も更け、夜のストリート散歩が趣味のディケンズに出くわすかもしれません。

 最後に訪れるのは、未来のクリスマスの精霊がスクルージを案内した「王立取引所」。そこには、ゴシックのヴェールをまとった山上真智子さまの黒の天使像が、霧の中に翼を広げて悠々と佇んでいました——

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山上真智子 | 人形作家 →Twitter
1989〜1990年、人形作家天野可淡氏に球体関節人形を学ぶ。
1999年・2006年、個展新宿アユミギャラリー。
2013年・2019、個展初台Zaroff。

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指し示された真実
 スクルージの前に姿を現す三人の精霊のうち、「過去のクリスマスの霊」「現在のクリスマスの霊」と違って「未来のクリスマスの霊」はゆったりとした黒衣に覆われているため、その容貌(が存在するのかも含めて)ははっきりとしない。姿が見えないだけでなく、声を発することもない精霊は、指で示すことで、スクルージを真実へと導いていく。

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 一見、他の精霊たちよりも、無感情で恐ろしいようにも思えるが、身体を用いた感情表現は思いのほか豊かで、心を入れ替えたスクルージが霊に懇願すると、霊の手が小刻みに震える様子を見せるなど、スクルージの思いは未来の霊に届いているようである。その意味では、三人の霊の中で実はもっともスクルージと意思の疎通が取れている、と考えられるかもしれない。

 他の精霊と同じく、スクルージを連れて瞬間的に空間(と時間)を移動できるが、未来の霊は、黒衣を翼のように広げて腕を下ろすと別の場所に移動している。わびしい墓地でスクルージの名前が書かれた墓石を指し示す衝撃的な場面は、ジョン・リーチの印象的な挿絵の効果もあり、ディケンズ作品の中でも有名な場面の一つとして知られている。

熊谷めぐみ | 立教大学大学院博士後期課程在籍・ヴィクトリア朝文学 →Blog
子供の頃『名探偵コナン』に夢中になり、その影響でシャーロック・ホームズ作品にたどり着く。そこからヴィクトリア朝に興味を持ち、大学の授業でディケンズの『互いの友』と運命的な出会い。会社員時代を経て、現在大学院でディケンズを研究する傍ら、その魅力を伝えるべく布教活動に励む。



00_通販対象作品

作家名|山上真智子
作品名|黒の天使

題材|『クリスマス・キャロル』
石塑粘土、その他(油彩仕上げ)
サイズ|縦38cm×横26cm×奥行18cm(ボックスサイズ)
制作年|2020年(新作)

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Text| KIRI to RIBBON

 霧の中。黒衣の天使でありながら聖母の面差しを含んだ天使像が、ゴシックなムードを静かに纏い、威厳ある翼を伸ばし、ロンドンを見下ろしている——

 本展にて初めてご紹介する人形作家・山上真智子さまの作品を初めて拝見した時、即座に連想したのがロンドンのハイゲイト・セメタリーを訪れた時に出会った小暗くもロマンティックな天使像でした。
 ゴシックの中に慈愛を湛える山上さまの人形たちは、時の風雨を受けながら、長い間、死を見守ってきた墓地の天使たちに通底する頽廃のエレガンスがあり、いっぺんで魅了されました。

 天使像はロンドンの空を思わせるブルーが塗られた箱の中に設えられ、台座に立っています。スカルを持つ手は「未来のクリスマスの精霊」の墓石を指す手に呼応し、死を司っているかのようです。

 現世と来世を行き来する「黒の天使」は、ゆったりとしたドレープの中に聖なる白を滲ませて、スクルージの前に現れたのかもしれません。

★山上真智子まの他の作品★

★作品販売★
通販期間が当初の告知より変更になりました

12月7日(月)23時〜販売スタート

★オンライン・ショップにて5%OFFクーポンが利用できます★

本展のオンライン開催方法と作品販売については

以下をご高覧ください

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