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ディケンジング・ロンドン|TOUR DAY 6|ピクウィック・ペーパーズ

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『ピクウィック・ペーパーズ』あらすじ
仕事を引退したピクウィック・クラブのサミュエル・ピクウィック氏は、ウィンクル氏、スノッドグラス氏、タップマン氏の三人のメンバーを連れて、見聞を広める旅に出る。サミュエル(サム)・ウェラーを従者にしたピクウィック氏は、行く先々でトラブルに巻き込まれながら旅を続けていく。

 6日間の旅程でご案内してきたヴィクトリア朝ロンドンヘの時空旅行もいよいよ本日最終日となりました。終幕のスタートを飾るのは、小説『ピクウィック・ペーパーズ』に登場する人気者のロンドンっ子。

 コンセプチュアルな書体選びと透徹の美意識で私たちを魅了する佐分利史子さまのカリグラフィの中で、コックニー(ロンドンなまり)はどんな風に表現されるのでしょう?

 いざ、最後の時間旅行へ!

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佐分利史子 | カリグラファ →HP
伝統的なカリグラフィ文字を基調とした作品を制作している。文字そのものが持つ何らかの力を、題材(詩や文章)が持つ情景や感情に変えられればと考えています。
紙一枚の形で成立することを前提に、額装も作品の延長として自身で制作していますので、あわせてお楽しみいただけると嬉しいです。

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ピクウィックの人気
 『ピクウィック・ペーパーズ』(1836-37)は、『ボズのスケッチ』で評判を上げ始めた20代半ばのディケンズが小説家としての地位を築いた作品である。月刊分冊形式で刊行された『ピクウィック・ペーパーズ』の売り上げは、はじめのうちは芳しくなかった。ところが、第四号で後にピクウィックの従者となるサム・ウェラーが登場すると、人気はうなぎのぼりとなり、作品は大ヒットを記録した。

 当時、ピクウィック氏の帽子やステッキなどの「ピクウィック・グッズ」が登場するなど、社会に一躍ピクウィック・ブームが巻き起こった。連載の途中でヴィクトリア女王が即位するが、ヴィクトリア朝の国民的作家となるディケンズの活躍はこの時すでに始まっていた。

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サム・ウェラー
 『ピクウィック・ペーパーズ』の人気に大きく貢献したのが第四号で登場した労働者階級のサム(サミュエル)・ウェラーである。ばりばりのコックニー(ロンドンなまり)の話し手であるロンドンっ子のサムは、明るい人柄と当意即妙な受け答えで、どんな場所でも人気者となる好人物である。物おじしない性格に加え、ざっくばらんなコミュニケーションの取り方と独特の言葉遣いで、格式ばった紳士たちをたじたじにさせることも多い。

 喧嘩っ早い一面もあるが、主人であるピクウィックが手を出しそうになると慌てて止めに入ることもある。サムの人気を知ったディケンズがサムの出番を増やしたことで『ピクウィック』の売り上げが大幅に上がるなど、若きディケンズの作家としての名声と人気を築いた大切な功労者の一人でもある。

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 ピクウィックとサムは強い信頼関係で結ばれている。誤解から、婚約不履行で訴えられたピクウィックは裁判にかけられる。証人として呼ばれたサムは、持ち前の頭の回転の速さで法廷の空気を変え、聴衆の心を掴むが、そのきっかけとなるのが、裁判官に名前のつづりを問われる場面である。

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 ロンドンっ子であるサムは、WellerのWのつづりをVと答えるが、これはW音がV音に変化する(その逆もある)コックニーの特徴である。この発言によって、ピクウィックに不利な流れとなっていたお堅い法廷の雰囲気は明るくなり、サムの独壇場に変わっていく。

熊谷めぐみ | 立教大学大学院博士後期課程在籍・ヴィクトリア朝文学 →Blog
子供の頃『名探偵コナン』に夢中になり、その影響でシャーロック・ホームズ作品にたどり着く。そこからヴィクトリア朝に興味を持ち、大学の授業でディケンズの『互いの友』と運命的な出会い。会社員時代を経て、現在大学院でディケンズを研究する傍ら、その魅力を伝えるべく布教活動に励む。



00_通販対象作品

作家名|佐分利史子
作品名|Wellerのスペル

作品の題材|『ピクウィック・ペーパーズ』
ガッシュ・アルシュ紙
作品サイズ|25.5cm×22cm
額込みサイズ|28cm×24.5cm×2.4cm
制作年|2020年(新作)

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Text|KIRI to RIBBON

 ロンドンっ子サムの軽妙なる才気、そしてコックニー(ロンドン訛り)で裁判官と会話する場面の原文をカリグラフィで見事に表現しきった一作。

 菫色は裁判官、労働者階級のサムはこげ茶色、二人のバックボーンを色と書体で棲みわけさせ、法廷でのウィットあふれる会話の場面を秀逸に作品化しています。自ら手がけるフランス額装にも会話は流れ、こげ茶色から菫色が覗くように配されています。

 格式張った法廷がサムの機転と洒脱によって和んでゆく様子、その場の空気感をも生き生きと伝える文字表現は最高にロック! 
 最終日のロンドンで、ヴィクトリア朝と現代のロックな心意気が出会うクールな一作を満喫しました。

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