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少女の聖域vol.2|ruff|菫色の秘匿

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Text|Kayoko Takayanagi

 少女の聖域は秘密の場所にある。
 そこは少女しか入ることができない。
 少女しか、少女をその心に抱く全ての人しか。

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 ruffの作品は非常にモダンでスタイリッシュであるにもかかわらず、同時にどこか古典的な美しさを備えている。
 祈りを捧げているような少女の肖像は、敬虔なイコンのようだ。閉じられた両の目は、密かにその内に抱く聖域に向けられている。端正なその面にかかるほつれ毛が、秘密の存在をそっと教えてくれる。胸元に揺れる鍵穴のモチーフは、聖域へ至る道のありかを示しているのかもしれない。
 ポルトガルの金線細工、フィリグラーナを思わせるベールや襟の意匠に、厳かな佇まいの中に潜む少女の秘めた情熱を見て取るのは、穿ち過ぎだろうか。

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 華奢な首筋と薄い身体。切り揃えた黒髪から覗いた頬からは、毅然とした表情がうかがえる。強い日差しを遮るつば広の帽子の下に、留まるべきか進むべきか、甘い逡巡が影を落とす。
 背中に迷いを漂わせながら、少女は佇む。
 精一杯背伸びをして聖域の外を眺めてみても、まだためらいがちに目を伏せて。もし戻ってこれなかったらどうしよう。少女は迷う。
 大丈夫、少女で在ることを忘れなければ、いつでも帰ってこれるから。

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 見開かれた瞳から零れ落ちる花のように、少女の感情ははらはらと散る。
 その菫色の虹彩に写るのは、秘められた聖域の風景か。
 繊細な筆致に被さるようにコラージュされた文字は、少女の上を通り過ぎていった時間の記憶。かけがえのないその時に刻まれた喜びや悲しみと共に、少女はこれからも生きていく。
 瞳に焼き付けられた思いが、菫色の花となっていつまでも散り続ける。

涙の花

 前回出展された作品が、聖域を形作る外壁だとしたら、今回のruffの作品はどれも少女の内面に踏み込んだものだ。
 古風でいながら進歩的。革命を希求しながらも現実に立脚する。
 少女の心は二律背反に揺れている。
 それでいい、少女に正解なんてないのだから。

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ruff|イラストレーター →Twitter
鉛筆や絵具、箔押しなどのアナログとデジタルを組み合わせ、モードとアンティーク、仄暗い雰囲気の世界や住人を描く。

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00_通販対象作品

作家名|ruff
作品名|聖域 II

インクジェットプリント・箔押し
作品サイズ|16cm×16cm
額込みサイズ|27.5cm×27.5cm
制作年|2021年(新作)

聖域Ⅱ

聖域Ⅱ_額

00_通販対象作品

作家名|ruff
作品名|背伸び

インクジェットプリント・箔押し
作品サイズ|14cm×9cm
額込みサイズ|20.5cm×15.5cm
制作年|2021年(新作)

背伸び

背伸び_額

00_通販対象作品

作家名|ruff
作品名|涙の花

インクジェットプリント・箔押し
作品サイズ|9cm×9cm
額込みサイズ|26cm×26cm
制作年|2021年(新作)

涙の花

涙の花_額

00_MauveCabinet_ラスト共通

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