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ヒルデガルト・シリーズ共同企画展

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オンライン開催・くるはらきみ & 霧とリボン ヒルデガルト・シリーズ共同企画展|前期グループ展《ヒルデガルトの小径》2022.6.22〜27|後期くるはらきみ個展《ヒルデガルト点… もっと読む
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ヒルデガルト・シリーズ共同企画展|展覧会のご案内

◆ オンライン開催 at MAUVE CABINET * 霧とリボン実店舗は休業中のため ご入場頂くことはできません  中世の修道女「ヒルデガルト・フォン・ビンゲン」は、ハーブや鉱物(宝石)の世界を切り開いた「ドイツ薬草学の祖」であり、教会音楽の作曲家としても優れ、修道院長として女性たちに心を寄せたフェミニズムの先駆者とも言われています。  展覧会メインヴィジュアルの背景には、ネウマ譜で記されたヒルデガルトの聖歌「O Vis Aeternitatis」を配しました。  

ヒルデガルト・シリーズ共同企画展|開催方法と作品販売

* オンライン開催 at MAUVE CABINET 霧とリボン 実店舗は休業中のため ご入場頂くことはできません 霧とリボン 実店舗「Private Cabinet」に作品を展示、会場の様子や各作品の紹介を写真と文章で、会期中、ここMAUVE CABINET(note)にてオンライン配信致します(6/24・6/25・7/5休)。会期中、各アーティスト作品を順番にご紹介してゆきます。当サイト更新も含めた最新情報は霧とリボン ツイッターでお知らせ致します。尚、配信予定の事前

ヒルデガルトの小径|アーティスト&執筆者紹介

 前期グループ展《ヒルデガルトの小径》、参加アーティスト12組とエッセイ執筆者4名をご紹介します。 un jour キャンドル作家 |全1種・複数点販売| ◆ Under the rose ビーズ刺繍アクセサリーブランド |3シリーズ・全16点発表| ◆ &Robe デザイナー クチュリエール |2シリーズ・全4種発表| ◆ 金田アツ子 画家 |油彩全1点・アクリル画全10点発表| ◆ くるはらきみ 画家・人形作家 |油彩全3点発表| ◆ keino g

ヒルデガルトの小径|巻頭エッセイ|江口理恵|愛と英知の創造力

 ミレニアムという新世紀前夜の1990年代前半、不思議な社会現象が起きた。スペインの名もない修道士たちが歌う『グレゴリオ聖歌』のCDが世界的に大ヒットしたのだ。単旋律のシンプルなチャント(詠唱・聖歌)が日本でも「癒しの音楽」として異例の20万枚のセールスを記録した。  時をほぼ同じくして、中世ドイツのヒルデガルトという名の修道女が作曲した音楽を、米国の現代作曲家がビートに乗せて編曲したアルバム『VISION』 も人気を博した。バブルがはじけ、不穏な空気が漂う世紀末にこのよう

ヒルデガルトの小径|鉱物Bar by 鉱物アソビ|鉱物と薬を巡る旅

 鉱物の買付や鉱物遺産巡りの旅と称して鉱山など鉱物スポットをまわっているうちに、ふと街中の何てことのない調剤薬局に鉱物が飾られていることに気づきました。それも一軒だけでなく、国もエリアも違う街でしばしば。  さらに、オシャレなオーガニックコスメも扱うようなモダンな薬局には鉱物入りのウォーターサーバーが置かれていたり、ルース(鉱物を磨いたもののこと)のガチャガチャを設置をしている薬局まであったり。  「なぜ普通の薬局に鉱物があるのだろう?」  それが鉱物と薬、ひいては鉱物とヒ

ヒルデガルトの小径|くるはらきみ|ヒルデガルトを辿って

 中世の修道女ヒルデガルトは、あまりに偉大で、遠い存在のように思える。しかし、くるはらきみの、丁寧に紡がれた作品の一つ一つが、ヒルデガルトと私たちが、遥かな時間を超えて、創作と自然という悠久の糸でつながっていることを教えてくれる。  その存在の大きさに身をすくませる必要はない。一歩ずつ着実に、身近な場所から、ヒルデガルトを辿って。  作家が描き出したのは、自然の恵みをいっぱいに享受しながら、仕事に精を出すヒルデガルトたちの日常。湯気が立っているのは煮詰めた果実の鍋だろうか。

ヒルデガルトの小径|DAY 1

本記事はオンライン展覧会《ヒルデガルトの小径》DAY 1の配信記録です。 Text|霧とリボン  雨粒の音階が聖歌の旋律となり、鬱蒼の緑と花々を揺らして——  夏至の到来と共に、ヒルデガルトの小径への扉が静かにひらきました。初日の今日、雨滴る小径のオンライン散策をお楽しみ下さいました皆様に深く御礼申し上げます。中世に生きたヒルデガルトへつながるエッセイと作品世界、お楽しみ頂けましたでしょうか。  くるはらきみ様と本展の構想を練った日から今日まで、長い時間をかけて、アーテ

ヒルデガルトの小径|keino glass & 内林武史|ヒルデガルトへと続く光

 古のヒルデガルトの存在に思いを馳せる時、静謐な光の風景が、そのよすがとなってくれるかもしれない。keino glassと内林武史。互いにリスペクトし合う二人のアーティストによる、初コラボレーション作品がここに完成した。  作品の写真はkeino glassによるもので、その繊細な美しさを余すことなく伝えてくれる。  樹の幹が見守る休息所に現れたのは、植物を興味深げに見つめるヒルデガルト。ガラスの向きを変えれば、四方に彫刻された風景が、重層的に立ち現れてくる。木箱の窓の十

ヒルデガルトの小径|un jour|無色というめくるめく香階の世界

 ──古来より人間の暮らしに光を灯し、現代では私たちの精神的な部分にそっと語りかけてくれるキャンドル。  植物、鉱物や音楽を研究した12世紀の聖女に捧げるun jourのキャンドルは、「存在を主張しない美しさ」を思想とする作家ならではのシンプルを極めた凛とした佇まい。  ラベルの文字ひとつ、包まれた薄紙一枚にも作家の日々の精進からでしか成し得ない究極の美と、天然素材ならではのあたたかさを宿している。端正で美しい作品写真もun jour自身の撮影によるものだ。  調香され

ヒルデガルトの小径|中村菜都子|生ける光の影

 モノクロームを基調としたシックな小匣に封じ込められたのは聖ヒルデガルトの幻視体験。中世女子修道院長であり作曲家であり治療家でもある聖ヒルデガルト。幼少期から晩年を通して「高みからの声」を聴き幻視を見続けていました。  聖ヒルデガルトがテーマの本展のために版画家・中村菜都子さまはボックスコラージュ作品を制作してくださいました。典礼劇 Ordo Virtutum《諸徳目の秩序》から名付けられた連作です。なお、美しい作品写真は菜都子さまご自身で撮影されたものです。  Larg

ヒルデガルトの小径|DAY 2

本記事はオンライン展覧会《ヒルデガルトの小径》DAY 2の配信記録です。 Text霧とリボン  菫色の小部屋に明滅するちいさな灯り。ふいに過ぎる清冽な香り。音色が弾む小宇宙——雨曇りのモーヴグレイに包まれた一日、菫色の小部屋にはヒルデガルトの時間がしっとりと流れて。  DAY 2の本日、小径を散策して下さいました皆様に御礼申し上げます。  本日最初のご紹介は、ガラス作家・keino glass様と美術作家・内林武史さまによる静謐を極めるオブジェ作品。初コラボレーションと

ヒルデガルトの小径|Under the rose|ヒルデガルトのシークレット・ガーデン

 12世紀の聖女ヒルデガルトが丹精こめて造った庭には、どのような植物や昆虫が棲んでいたのだろう?  彼女が遺した音楽や、植物や医学についての膨大な書から想像すると、修道女らしい清らかさだけではない、個性的な美しさを湛えたちょっとビザールな動植物も生息していたと思われる。清濁併せ呑む聡明な知性こそが、時の皇帝や教皇にまで影響を与えたヒルデガルトの魅力だからだ。  今回、霧とリボンの企画展に初登場のUnder the rose=『秘密』という魅惑的な名の宝飾店から聖女の庭に放

ヒルデガルトの小径|One noble novel|ヒルデガルトが導くタロットのエッセンス

 神秘家、修道院長、作曲家、薬草学の師など様々な顔をもつ多才なヒルデガルト。彼女を知るにつれて語りかけてきたのは、私の制作のインスピレーションの源であるマルセイユタロットより2つの精霊(カード)でした。  男性中心の社会のなかで都合の悪い哲学は、弾圧を逃れるためタロットをはじめ様々な芸術や建築などに巧妙に残して受け継がれてきた歴史があります。  女性の地位がとても低い中世の時代に活躍したヒルデガルトの仲介により、僭越ながら私もマルセイユタロットの秘伝から「今を豊かに生きるた

ヒルデガルトの小径|&Robe|静寂の祈り—夏至のタブリエ—

 偉大な修道女ヒルデガルト・フォン・ビンゲンに捧げられる本企画展、初参加の&Robeさまによる2シリーズがお披露目となります。  修道院での生活は、労働と祈りと休息のサイクルというとてもシンプルなものでした。労働には、自給自足のための庭仕事以外に、修道僧たちの衣類、さらには司教や法王の法衣の仕立ても行ったそうです。  衣服を身に着けることで、ヒルデガルトの生活の追憶を辿るだけでなく、彼女の行っていた手仕事にも思いを馳せることができそうです。  作者自身によって撮影された美し