魂の水槽にて

熱帯魚

悲しみの尾ひれは長くてまるで熱帯魚。延々水槽で飼われているわたしは、翻る尾ひれの青い先っぽを見てかなしいかなしいかなしい。どうせ死ぬしねってどんだけ先の話？わたし生きなきゃならないらしいの、笑わせないで。
「ようこそ地球 ここは安全圏じゃないっすよ 呼び出しちゃってごめんね」って子供に言える大人になりたい。産むはエゴ産まれるは被害って分からないのに無闇に親を慕っている人間ってグロテスクでナンセンスでその愚かさがちょっとエロい。だからこそエログロナンセンスをちょっと、穿った見方をちょっと備えたかわいい君にごめんねっていつか伝えたくて、この歌詞の詩情がわかる悲しくて美しい人間と恋愛をして、嘘もう恋なんてなくていい、魂の同盟を結んだらきっとこのさき悲しくなんてなくてそれがかなしい。少女の夢はくたびれ儲け、女の行き着く先は砂漠。何も分からないくせにわかった振りだけは上手になりますね。死んじまえって言うだけタダでしょ。殺す度胸も無いから今日もペンを握るわたしの視界にはいつも青色がちらついている。希死念慮渦巻く水色の水槽を、ゆらゆら。

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死神

冬も肉体が燃えているのは彼が神様だからで、粉雪舞う銀世界の合間にちらちら赤く、目眩のする君の夜。怒りで目が覚めた朝は銀色。太陽みたいに眩しくて鮮烈な健やか殺意をハイライトに隠して、パールリングの水光レンズでわたしあたしの絶対可憐♡鏡像彼女。
どうしてもどうしてもこんなクソみたいなぢごくっ♡が現実って名前なの分からん過ぎる、ので、この世には情動にだけ干渉してくれる神様が必要だと思う。わたしの神様は言葉と初期衝動とジョセフ・ジョースター。古くさっても新鮮な好きで、ときめきで、憧れで魔法をかけて新しい神様にするからきみの新しい神様も見せて。神様をもってる私たちはみんな魔法少女だからきっと生きられる。こんな地獄にも仏、ううん神様、きっとわたしだけのとびきりキュートで残酷な死神様。愛してると殺してやるだけを必殺技のコマンドに、いつかかわいく死んでやりましょうね。

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シンガーソングライター

乗り換え駅までの6分でお前のハートをズタズタにできるようなバラバラ殺歌を書いてそのまま田園都市線でどこまでも逃避行したい。馴染みのない電車はロマンで終点駅はロマンで電車に終点があるのはロマンじゃない。街を行く電車は憧れのちんぷんかんぷん都市機構に無傷でダイレクトアタックできるハートブレイキンラブラブロマンスだよねこの一文と十両編成とどっちが長いかな。全てのものは格納されていく。収納されていつか忘れ去られてそうしたら本当の死。だから踊っちゃおーー右も左も明暗もわからんうちに踊り場から足を滑らせて真っ赤な果実になればうちらきっとアダムとイブも拐かせるよ。格納に抗うには新世界をつくること。おぼえていてねきっと約束よ。電車の終点が全部海に通じていたら人生みたいで素敵なのに。はい6分！乗り換えて街という街地獄という地獄を進んだ先にはまた愛しい地獄がある。

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カスタムラブドール

読んでいるところを見られたくない本ってありますか。私は最近買った『かわいいピンクの竜になる』って本、ひとりでこっそり読みたい。人の思想を枕元で開くのが好きだから。
少女性、カミング・オブ・エイジ、犠牲、祈り、ピンク、フリル、純白、可憐な魂を隠した汚い肉体をいくら貪られても傷つかないように霊魂と肉を分離したい。さも「肉体はあたしじゃありませーん」みたいな顔がしたい。嘘。できない。目頭切開も二重整形もメーラー吸引も鼻フルもしたいよーー泣だってぜんぶあたしなんだもん。選びとった魂に似つかわしい肉体が欲しいよ。プリキュアになれそうな顔とか。わたしってまだまだ全然だめ。いっそ偶像の方を先に作っておいて似合う肉体を当てはめた方がいいのか。娘の名前、可憐がいいです。かわいいので。
魂だけになったらきっとアキバは私のもの。魂だけのわたしは新宿を我が物顔であるけるし、渋谷を我が物顔であるけるし、いや嘘かも、犠牲と祈りをピンクの花弁に包んで撒き散らしながら、みんなを救いに来たよって顔で私を救いたい。

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銀世界のイヴ

昔書いた詩の「着払いで届いたフリルの地獄で溺れて死ぬって決めてる」←マジで、そう。インターネットにお墓を立ててね。インターネット・モードの中でも死にたい。早く死んで永久になりたい。
天国を押し売る仕事、コールセンター。甘い口先で声色で背徳を、隠して、林檎を齧らせる蛇。わたしの神様はこの冬も辺りを巻き込んで燃え上がっていて、本当は人間だから仕方ないんだけど、無理矢理神様が人間をやってるんじゃないかなって思う。ドキドキするあたらしい神様の名前をおしえて呪いを分け与えて、そうして灯火は街の明かりより弱く強かに、冬にも天使をみつけられたら死んでしまいたい。翻訳されたら消えちゃうような白くてつめたい詩情という殺意をフリルに、雪に、翻訳して、暗い窓辺から真っ白が見たいの。