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古着の記憶/それは試着室で甦る 001-1/映像脚本

【登場人物】
・正臣真吾(マサトミシンゴ):古着屋ストレンジストーリーズ(STRESS)のオ
 ーナー店長。
・桜木直也(オウギナオヤ):STRESSの客001。古着の記憶の体験者。
・一条健一(イチジョウケンイチ):三着目のシャツの元の持ち主。エリ
 ートサラリーマン。
・吉沢ミキ(ヨシザワミキ):一条の婚約者。
・高原京子(タカハラキョウコ):一条の取引先の社長。一条を狙っている。
・京子の専属運転手。
・タクシーの運転手。

【設定】
・年齢は未設定。演者に合わせる。
・商店街のイメージは、東京の茶沢通りの下北沢方面。
・IKビル:一条健一の働く会社があるビル。
・TKビル:高原京子の会社があるビル。
・YMマンション:吉沢ミキが住んでいるマンション。
・ストレンジストーリーズ:奇妙な、風変わりな物語。

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○ある商店街
   道の両側に色々な店があり、大勢の人が行き交っている。
   その人並みをすり抜けて、桜木直也が歩いて来る。

○ストレンジストーリーズ/STRESS・看板

○同・内
   沢山の古着が整然と陳列してある。
   扉を開け、桜木が入って来る。
   奥から、「いらっしゃい」という正臣真吾の声。
   桜木、古着を物色する。
   しばらくして、気に入ったシャツ数点を持ち、奥へ行く。
   レジカウンターで、正臣がリストのチェックをしている。
桜木「すみません。試着してもいいですか?」
正臣「(顔を上げ)どうぞ。お気をつけて」
桜木「え? どこかへ行くんじゃなくて、試着をしたいんですけど」
正臣「失礼。(試着室を指差し)あちらです」
桜木「どうも。(首を傾げながら試着室へ行く)」

○試着室・内
   桜木、ジャケットとシャツを脱ぎ、一着目を着て、鏡を見る。
桜木「(小声で)イマイチ…かな」
   と、それを脱ぎ、二着目を着て、鏡を見る。
桜木「(小声で)うん、いいね。まぁ念のため」
   と、それも脱ぎ、三着目を着る。
桜木「(叫ぶ)うわッ! 今、脳に何かが飛び込んで来た!」

○同・レジカウンター内
正臣「あ、当たりを引いちゃったか! いや、はずれかな…」
   試着室の中では、桜木が叫んでいる。

○と或る公園・夜
   辺りには誰もいない。
   そこへ、必死の形相で高原京子が走って来る。
   そのすぐ後ろから、三着目のシャツ(裏返し)を着た桜木が、ナイフを
   手に持ち、追いかけて来る。
   すると、京子が何かに躓き、転ぶ。
   追いついた桜木が、京子に馬乗りになり、ナイフを振り上げ、京子の
   胸に突き刺す。
   と、断末魔の叫びを上げる京子。
   桜木、身体を起こし、京子を見下ろす。

○オフィス街
   太陽が降り注ぎ、人々が行き交う中を、スーツを着た桜木が、颯爽と
   歩いて来る。

○IKビルの入り口
   桜木がやって来て、中へ入って行く。

○同・内・エレベーターホール
   扉が開き、桜木が出て来る。

○同・オフィス・内
   桜木が入って来て、自分の席に座る。
   と、電話が鳴る。
桜木「(受話器を取り)はい、え? お、お世話様です。…はい。では、すぐ
 にお伺いします。…はい。失礼いたします」
   受話器を置き、舌打ちしながら立ち上がり、オフィスを出て行く。

○TKビル・全景

○同・オフィス・内
   桜木が、高原京子の前で土下座をしている。
京子「ねぇ、頭(ず)が高いんじゃない?」
桜木「ゆ、床におでこをこすりつけております」
京子「床を削ってみれば」
桜木「は、はい。(頭を上げる)」
   と、その顔が桜木から一条へと変わり、勢いよく頭を下げる。
京子「(大声で)止めなさい!」
   一条、床寸前で頭を止める。
京子「死ぬ気なの? ていうか、そんなに私がイヤなの?」
一条「いえ、高原社長が…」
京子「京子でいいって言ってるでしょ!」
一条「きょ、京子社長が…」
京子「社長もいらない!」
一条「京子…さんがイヤとかではなく、私には婚約者がおりますので」
京子「だから、セフレでいいって言ってるでしょ。って、エッチなコトバ」
一条「も、も、もったいないお言葉です」
京子「ねぇ、部下の失敗のために土下座までして。一言『はい』って言え
 ば、そんなことをする必要はなくなるのよ」
一条「いえ…あの…その…」
京子「(ため息をつき)いいわ。今日はもう帰って」
   一条、ゆっくりと立ち上がる。
京子「(一条に抱きつき、人差し指を一条の唇に当て)この口に、『はい』っ
 て言わせてみせるわ。きっとね」
一条「(京子の身体を離し)では、失礼いたします。(部屋を出て行く)」
京子「(一条を目で追い)必ず、落とす!」

○YMマンション・全景・夜

○同・部屋・内
   一条と吉沢ミキが、リビングのテーブルに向かい合って座っている。
   テーブルの上には、ミキの手づくりの料理と、赤ワインとグラスが置
   かれている。
ミキ「(グラスを持ち)今日も、お疲れ様」
一条「(グラスを持ち)ホント、疲れたよ」
ミキ「何かあったの?」
一条「いや、今日はちょっと忙しかっただけだよ」
ミキ「ねぇ、悩みがあるなら言ってよ。仕事のことはわからないけど…」
一条「ありがとう。大丈夫だよ。それより、食べよう。美味しそうだ」
ミキ「美味しそうじゃなくて、美味しいの!」
一条「ゴメン。そうだった」
   二人、笑い合う。

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