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大きすぎる鏡 001/映像脚本

【登場人物】
・桜田淳子(サクラダアツコ)29歳、女。
・森田昌子(モリタマサコ)28歳、女。
・坪倉育生(ツボクライクオ)29歳、男。
・澁谷恵紀(シブヤシゲノリ)28歳、男。


○瀟洒なマンション・外
   うつむきかげんの森田昌子(28)、坪倉育生(29)、澁谷恵紀(28)が
   中へ入って行き、エレベーターに乗る。

○エレベーター・目的階・外
   エレベーターの扉が開き、三人が降りて来る(無言)。
昌子「(声)アツコ!」
育生「(声)いきなり呼び出しって」
恵紀「(声)何があったんだよ?」

○淳子の部屋・外
   昌子がチャイムを押す―チャイム音。
淳子「(声)いいから入ってよ」

○美紀の部屋・内
   2LDKの落ち着いた部屋。
   天井に届くほど大きな鏡の前に、桜田淳子(29)、昌子、育生、恵
   紀が呆然と立っている。
淳子「これを、見せたかったのよ」
昌子「す、すごいね!」
育生「圧巻!」
恵紀「どうしたの、これ?」
淳子「祖母の形見分け」
昌子「おばあちゃん、亡くなったの?」
淳子「ええ、先週」
三人「お悔やみ申し上げます」
美紀「ありがとうございます」
恵紀「だけど、でかすぎじゃない?」
淳子「そうなのよ」
育生「でも、おばあちゃんの形見だからな」
淳子「そうなのよ」
恵紀「捨てるなんてできないよな」
淳子「そうなのよ、そうなのよ」
昌子「なんでこんな大きな鏡をもらったの?」
育生「もっと小さいのもあっただろ?」
淳子「祖母の家へ行くたびに、いいなぁって」
恵紀「わかる! 惚れちゃったんだろ?」
淳子「そうなのよ」
昌子「わかる!」
淳子「でも、こんなに大きいとは思ってなくて…」
育生「おばあちゃんの家の天井って高いんじゃないか?」
淳子「うん。この鏡が置いてあったのは、吹き抜けの玄関だった」
恵紀「なるほどね!」
昌子「どういうこと?」
育生「高い天井の部屋の物を、低い天井の部屋に持って来たら?」
淳子「なるほどね!」
昌子「どういうこと?」
育生「低いから圧迫されて狭く感じる」
淳子「ていうか、狭くなった!」
昌子「そっか、だよね」
恵紀「倉庫に預けるとか?」
淳子「それも考えたんだけど、でもねぇ」
育生「そりゃあそうだよ。アツコがこの環境に慣れればいいんだよ」
淳子「うん、そうだよね」
昌子「ねぇねぇ、こんなに大きな鏡だと、夜になったら何か起こりそうな気
 がしない?」
淳子「止めてよ、マサコ!」
育生「鏡の中に引きずりこまれるとか?」
淳子「ちょっと、イクオまで」
恵紀「ミラーマンが現れるかも!」
淳子「なにそれ?」
恵紀「昭和の時代の変身ヒーロー」
育生「ウルトラマンみたいなやつ」
昌子「なんで知ってるの?」
恵紀「YouTubeで見つけた」
育生「スペクトルマン」
恵紀「シルバー仮面」
育生「アイアンキング」
昌子「ちょっと、鏡の国のアリスにしてよ。アツコは、これでも女の子なん
 だから」
淳子「これでもって、失礼ね!」
昌子「ゴメン、ゴメン」
恵紀「なぁ、腹減って来たんだけど」
育生「あ、俺も」
淳子「なんか作ろうか?」
昌子「取ろうよ、出前」
淳子「なんでよ?」
昌子「アツコの料理は美味しいけど、時間がかかるから」
淳子「まぁ~ねぇ~」
昌子「何にする?」
恵紀「ピザ」
育生「寿司」
淳子「ハンバーグ、う~ん、ステーキ」
昌子「さすが、肉食系」
淳子「そう、お肉が好きなのよ」
昌子「いや、そっちじゃなくて」
育生「アツコはそうなのか?」
昌子「そうなのよぉ!」
恵紀「そうなのかぁ!」
淳子「(昌子に)バカなこと言ってないで、早く頼んでよ」
昌子「私が?」
淳子「言い出しっぺでしょ」
恵紀「カトちゃんペ」
昌子「静かに! では、決を取りま~~~せん」
恵紀「取らんのかい!」
昌子「だって、私もお肉を食べたいから」
育生「ていうことは、マサコも肉食系なんだ?」
昌子「まぁね」
恵紀「否定せんのか~い!」
昌子「エセ関西ツッコミ」
淳子「やめて!」
恵紀「冷た!」
昌子&淳子「ウザ!!」

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