詩みたいな【白い羽】#シロクマ文芸部
小牧幸助さんの企画「白い靴」に参加させていただきます☆
お題「白い靴」から始まる物語
【白い羽】(380文字)
白い靴がほしいなんて
どうして
そんな思いが浮かんだのだろう
なにかのまちがいかな
僕の脳はかなり劣化しているから
でも
白い靴という言葉は
ぼんやりとした霧の中から
むかしの記憶をよみがえらせた
子どもの頃
僕は白い運動靴が大好きだった
真っ白な羽が僕の足に生えて
誰よりも早く走れる気がしたから
誕生日に
あたらしい靴をもらうと
すぐに外へ飛び出した
五月の風と光が僕にささやく
はしれ!走れ!
そうだ
僕はどこまでだって走れるぞ!
ずーっとずーっと遠くまで!
ああ、あの感じ……
かたい地面を蹴り上げて
空中を飛んで着地する
それを
目にも止まらぬ速さで繰り返す
白い羽が生えた足は疲れを知らず
僕はいつまでもいつまでも走り続ける
━白い靴がほしいな……
━パパ、夢見てるの?
そうつぶやいたのは僕の娘
━靴なんて……履けないわ
ああ
そうだね
君の言うとおりだよ
今の僕に靴なんて必要ない
ただ
ちょっと夢を見ただけなんだ
しあわせな夢を
おわり
© 2024/5/19 ikue.m
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