なぜいま壁新聞を作るのか
壁新聞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
壁新聞(かべしんぶん)とは社会においての情報伝達手段の一つ。通行人の通る建物の壁などに自身の主張を書いた紙片を貼り付けるということで、それを社会に対して公開することが目的とされている。
概説
この方法は経費をかけないで情報を伝達できる事がメリットとして広く行われている。政治や商業においては宣伝するということを目的として広く行われている。この方法は古代に人民を統治する方法としても使われており、昔の権力者は人民に事柄を告示する場合には広場などに壁新聞を掲示するという形式をとっていたこともある。2011年に東日本大震災が発生した際には、石巻日日新聞は新聞を印刷する機能が使えなくなっていたことから、数日間は手書きの壁新聞を発行し避難所などに張り出すという情報伝達手段をとっていた[1]。
中華人民共和国では文化大革命の時期を中心に、大字報と呼ばれる壁新聞が政治運動の手段として広く利用され、1975年から1980年までは大字報の作成を「人民の権利」として憲法で保障していた。
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4月5日から壁新聞を作っています。
写真と日記と短歌のネットプリント壁新聞ジン。
1日1枚書いて、セブンイレブンのネットプリントのサーバーにPDFファイルをアップし、そこからセブンイレブンに行く毎日。
店頭のコピー機に8桁の番号を入れて60円を払えば(そしてアップロードされてから1週間の有効期限内であれば)誰でも私の壁新聞を印刷できるようにしています。
ネットプリントというカルチャーについては、このサイトを見ていただくのが一番早いのではないかなと思います。
とてもわかりやすく説明されている。ありがたい。
いつもはごくごく個人的な日記しか書かない私ですが、たまにはこういう記事も書いてみようかなと思い書いています。が、うまくいくかはわかりません。でも、書いてみます。自分の心の整理のためでもあるから。
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それでは改めて、私がネットプリントで壁新聞を作る理由について述べていきます。
1.有益なことが何も書いていないものが読みたかった
4月頭の時点で、私は「情報酔い」をし始めていました。
何が正しくて何がデマなのか、どれが有益でどれがいらない情報なのか。とてもしんどかった。でも、見ないわけにはいかない。だって心配だから。自分のことも、これから何が起きるのかも、家族のことも、仕事のことも。
端的に言うと、私は疲れてしまいました。
有益な情報すら読みたくない。脳が情報を入れることを拒否をしている。
正直、なんの役にも立たないどーでもいいことが知りたいし、誰かの些細な心の動きとか、そういうものに触れたいと思ってnoteやツイッターやインスタグラムを見てまわりましたが、探し方が偏っていたこともあり、私の求めているものは見つかりませんでした。
だからまずは自分が書いてみることにしました。誰のためでもなく自分のために。ゴールなどは特に考えず、飽きたらやめようくらいの気持ちで始めました。
2.絶対に自分にお金が入ってこないものが作りたかった
この壁新聞を始めた頃、私の見ていた世界で一番多かった動きは「得られなくなった収入をどうやって補填するか」というものだったと記憶しています。
営業が出来なくなったお店、活動が出来なくなったアーティスト、テイクアウト販売、グッズ販売、寄付、クラウドファウンディング…。
私も私で予定していた撮影が無くなったり、大好きなバイト先が休館になってしまったり、副副業の依頼が減ってしまったりと、その煽りを受けた人間のうちの一人でした。
本来ならば自分も何かをして収入を得なくてはいけない。YouTubeを初めてみたり、写真でグッズを販売してみたりとか、やらないといけないのかな…と考えて色々な人の動きを見ているうちに、突然、自分の中の脳神経のうちの一つがぷつんと音を立てて切れました。
"逆に絶対に自分に1円もお金が入ってこない方法を取れば良いのでは…?"
回路が不明ですが、私はたまにこういう思考になります。
お金が極限が無い時に限って「金ならある、何処にでも」という思考になり突然バンバンお金を使い出すモードに似ています。(これを私は「カネは天下の回りものモード」と呼んでいます)
思考回路が不明ですが、この考えに至った瞬間になぜかとても楽になりました。「なんとかお金を稼がなくてはいけない」。そこから突然解放されたような気持ちになったのです。(依然として根本的な問題解決はしていないのですが…)
そうだ、私は今は自分にお金が入ってこない方法でジンを作りたい。では何にしよう?
そう考えた時に、ふと、セブンイレブンのネットプリントのことが頭に浮かびました。
3.ゼロックスのコピー機を使いたかった
私がファミリーマートとローソンのネットプリントではなくセブンイレブンのネットプリントにこだわるのには理由があります。
セブンイレブンに導入されているコピー機は富士ゼロックス製です。
(ちなみにファミリーマートとローソンはシャープ製の複合機)
写真家のアラーキーこと荒木経惟さんという方がいます。
アラーキーは電通の会社員時代、会社のゼロックスのコピー機を無断で使用して勝手に自分の写真集を制作していたという逸話があります。(確かにアラーキーならやりそう)
大学1年生の時に先生からこのエピソードを聞いた当時19歳の私はたいへん衝撃と感銘を受け、そしていつの間にかアラーキーへの憧れがゼロックスへの憧れへと変異し、その影響からセブンイレブンのゼロックスを使いミニ写真集を夜な夜な作っていた時期もありました。
こういった理由で、私はゼロックス製複合機への憧れが強くあります。
1970年にアラーキーが電通のゼロックスを勝手に使用して写真集を作っていたことに想いを馳せながら、2020年の私はセブンイレブンのゼロックスに60円を払い自分の写真(と短歌と日記)を印刷する。
憧れをなぞってみたかった。ただそれだけの理由で、セブンイレブンのネットプリントに拘っています。
(※とは言っているものの、ローソンとファミリーマートでも印刷できるようにしてあります。この記事の最後にやり方と手順を書いておりますのでそちらも是非ご活用下さいませ)
4.毎日続けるための何かが欲しかった
この壁新聞を始める前日に、私の大好きなバイト先は休館になりました。
このエピソードは壁新聞の創刊号である4月5日のVol.1にも書いたのですが、私にとってアルバイトは「お金を稼ぐ手段」ではなく「好きでやっている事(趣味に近い)」だったので、休館が決まった時は本当にショックでした。
習い事に行けなくなる感覚、学校の休校が決まってしまった感覚ってこんな感じなのかなあと思い、本当にさみしくて、喪失感というか、「これから私はどうしたら良いんだろう?」とやっと真剣に考えたタイミングでもありました。
「noteを毎日更新する」とか、「インスタグラムを毎日更新」とか、考えるけどいまいち自分にはピンと来ない。うーん。ディスプレイではなく紙で読みたい。
なんていうか、学校のプリントみたいな…ペライチの…交換日記のような…毎日…
と考えているとき、ふと頭に浮かんだのは「短歌」でした。
私の話になりますが、私は21歳の時のほんの数ヶ月間だけ短歌が無限に作れた時期というものがあり、(その時期は、雑誌ダ・ヴィンチの穂村弘さんの連載コーナー「短歌ください」に応募したら必ず選ばれて掲載されていました。数ヶ月間限定の才能。)その時のストック短歌がたくさんありました。
そして、写真を始めた頃から今まで撮りためた写真も膨大な量があります。その中には、作品としてはボツにしたけれど、日記と組み合わせると生き返る写真というものがいくつか存在します。
それらを使って何かできないか…短歌と日記と写真で何か1日1個作りたい…
そうだ、壁新聞を作ろう!
放課後の教室で、残っている人であーだこーだ言いながら作るイメージ。
そういうものが作りたい、というより、私はそういうものが毎日読みたかったのだと気付いたのはこの壁新聞を書き始めて10日が経った頃でした。
5.物心がついたお子さまからおじいちゃんおばあちゃんまで安心して一緒に読めるものが作りたかった
twitterにて「壁新聞を読んでいます」と声を掛けて頂いたワタナベさん。
その中でも特に嬉しかったのが「新聞、家族揃ってハマってまして、子供が自分でも本を作りたい〜と意気込んでいます。」というお言葉でした。
私は、写真においても文章においても作品制作においても、「家族と一緒に見られるようなもの」を目標、というより、自分だけの理想としていました。
もちろん壁新聞を作る時もそのような意識はありました。しかし、本当に小学生の女の子が読んでくれるなんて想像もしなかったのです。
ですので、上記に載せたワタナベさんのnoteは私にとってとても嬉しく、そうしてそこから実際に本作りをする娘さんの姿に心を打たれました。(特に編集部さながらの机で作業する娘さんの写真にグッときました)
インターネットに溢れる言葉は(今に限ったことではありませんが)過激なものが多いです。私は皆と一緒になって怒ることができたらとても楽なのだろうけど、悲しいことに、その能力が欠如しています。
私は「こんなことがあったよ〜」と気軽に家族に言えるようなもの、共有できるようなものが好きです。誰かの怒りや悲しみを共有することも時として大切だとは思うのですが、私はその役割を担うことができないと思います。
「誰かの気分転換になったら良いな」という願いも込めて作っているこの壁新聞が、実際にワタナベさんのご家族に、一緒に読んで頂けたということ。とても嬉しかったです。この場を借りてお礼を伝えさせていただきます。ありがとうございます。
6.壁に貼って読む読み物が読みたかった
読むことは、正直とても疲れます。
「時間がたくさん出来たから本を読もう!」と思ったものの、私はこの生活になってから本を一冊も読み切れていません。
4月頭のそんな時、スーパーの買い出しに行く途中にある近所の掲示板が目に入りました。
立ち止まって、そこに貼ってあるなんてことのない町内会便りのようなものを読んでいると、
その紙に書いてる内容というよりもその行為(壁に貼ってある紙の文章を読むという行為)自体にとても安らぎを覚えました。
私がジンではなく壁新聞が作りたいと思ったのはそういう理由です。
今の私には正直なところジンを読む気力もありません。(でも読みたいジンはたくさんあります)
私の家では壁新聞を廊下に1枚ずつ貼っており、歯磨きをしている時やケトルでお湯を沸かしてぼーっと待っている時に私や夫が読んでいます。
何かをしながら、目で文章をなぞっていく感覚。
私はこういうものが欲しかった。
そして、誰が印刷してくれるかは分からないし自分にお金も入ってこないけど、これをとりあえず共有してみようと思いました。
ツイッターとインスタグラムで壁新聞を印刷できる予約番号を公開すると、日に日に色んな方から「読んでいます」というメッセージを頂く回数が増えました。
正直なところ、これをわざわざ印刷して読んでくれるのは私の知人友人合わせて5名くらいだと想定していたので、会ったことのない方、今まで全く面識のなかった方、通りすがりのインターネットでたまたまこの壁新聞のことを知ってくださった方が印刷してくださり、メッセージまで送ってくださるという自体は、正直全く想定しておりませんでした。
ずっと連絡を取ることが出来ていなかった方や、音信不通になってしまったと思っていた友だち、話しかけてみたかったけど勇気が出なくて関わりを持てなかった方。
色んな人が、この壁新聞をきっかけに「元気ですか?壁新聞読んでいます」と連絡を下さりました。
すごく嬉しかった。人と会えない毎日だから、そういう、なんてことのないやり取りにとても救われました。
この壁新聞を作ることによって一番救われているのは、最初から今までずっと私自身で、ノリと勢いで始めた1日1枚も昨日で16号目を迎えました。
うまくまとまらないので、最後にここ最近の壁新聞のスクリーンショットをお試しで3つくらい載せて終わりにします。
もう有効期限が終了(データの期限があり、アップロードから1週間で印刷が出来なくなります)してしまい、印刷できなくなっているものも含まれておりますのでご了承くださいませ。
壁新聞の予約番号や有効期限などは基本的に私のツイッターもしくはインスタグラムのストーリーにて随時更新しております。
もしご興味を持ってくださる方がいらっしゃいましたら、お手数お掛けしますがそちらの方で確認していただけますと幸いです。
以下、4/21現在セブンイレブンで印刷可能な壁新聞の予約番号と有効期限一覧と、一番最初にツイッターに載せたなんとなくの説明です。
(※下記ツイッターに載せている予約番号:94520901は現在無効になっております。ご注意くださいませ)
ちなみにですが、この壁新聞をいつまで続けるのですか?とよく聞かれるのですが「とりあえず5月2日~4日くらいまでは続けます」と答えています。その後も続けるかどうかについてはまだ考え中です。どうしよう?
ありがとうございます 励みになります