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じんわり染み入る春の本

遅ばせながら、「そして、バトンは渡された」を読了した。

恋愛物、ペットもの、友情物ではまっっったく涙を流せない私であったが、(花束みたいな〜や101プロポーズもからきしであった)

唯一泣いてしまうジャンルがある。

そう、家族もの

私のウィークポイントを一生突き刺し続けた(しかもすごく優しく)本がこちら、「そして、バトンは渡された」である。以下ネタバレがあるかもしれないので、気を付けてください。

優子の大きな感情の揺らぎはない。でもそれが逆に、優しく暖かで、リアル。


主人公の優子は、他の小説や漫画であれば激烈に描かれるであろう場面でも、あまり感情が揺れない。

というか他の登場人物もそうだ。うわ、絶対にすごいトラブルになる!!とか、ここから何が起こってしまうんだ!!とか、普段から刺激的な展開に慣れ親しんでいる私は何度もハラハラ期待したものだ。

しかし、そういった場面は毎回、拍子抜けなほどあっさりと、誰かの発言で収まっていく。

設定や起こる出来事はドラマチックだが、それを取り巻く登場人物たちがあまりに穏やかなので、なんかヌルッとしている

だがそれがいい。

感情の起伏が少ない分、何か優子の心が揺らぐ出来事があると、優子にとって何が大切なのかがとてもわかりやすかったし、なんだかその穏やかさが全体を通して私の心をじんわりと温めてくれた。

特別じゃない、特別な愛

「愛」について描かれた本のように私は受け取ったが、その愛、はものすごく特別な愛ではなかった。激烈な感情が込められた愛ではなく、穏やかで、包み込むような、すぐそこにあるような愛。

作品は愛を特別なものとして描かなかったが、それが逆に、だからこそすごく特別なものに思えて、とても愛おしい気持ちになった。

特別ではない愛が、どれほどスペシャルで温かく、私たちの心を包んでくれているのか、それに気付かされたのである。

読了してから、ふと自分のことを振り返る。普段刺激ばかり求めてしまいがちなわたしであるが、「今すでに、自分の中にある愛」を見つめ直すことになった。

親、友達、恋人、家族…

すでに自分が持っている愛、取り巻いている愛をどうしようもなく愛しく思える、そんな素敵な本でありました。


サイコー。幸せ。よく泣いた。
心が疲れて癒しを求めている家族もの無理(泣)族の皆さん、オススメ。


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