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田舎の小さなお祭りと雨予報

みんなでつくってみんなで楽しむ

田舎の小さなお祭りはおもしろい。設営からなにから準備は町の人で集まって手作りされていて、地域のおかあさんたちが良心的な価格で夜店を出しているので子どもたちだけで遊びに行ってても安心。本格花火を間近で見られるのも、地元に花火師さんがいる田舎ならでは。みんなでお祭りの準備して、当日はみんなで楽しんでいるところもすてき。一緒にステージを設営したおじちゃんやさっきまでかき氷を売っていたおばちゃんが、出番が来ると阿波踊りをおどっていたりする。

地域おこし協力隊としてこの町で活動を始めてから夏祭りの実行委員に関わるようになり、この夏で3度目を迎えた。だいぶ流れも把握できて、どんなことをしたらいいか、どのくらいで進めればいいかわかってきたつもりでいたところに、1週間前に雨予報が出た。過去30年の歴史があるこのお祭りは1度も雨で中止になったことがないらしい。大丈夫だいじょうぶ、いつもなんだかんだ言って晴れてきたから、変わらずいつもどおり準備続けようーーなんてやっていたんだけれど、5日前になっても3日前になっても変わらない。どうしても当日雨が降るようなのだ。それまで雨の場合どうするかという話題を避けてきていたけど、ついにお祭り当日雨が降っていた場合のことを決定していくこととなった。

もしかしたらお祭りはできないかもしれない

まず、実行委員会で中止の判断をいつにするか決めた。夏祭りは土曜日の夕方、天神さんが本殿から御旅所までお神輿で巡行されたあとの16:30頃から開催される予定だ。お神輿が通る時間までに夜店用のテントやステージがこの時間までにできていないといけない。テントや机、椅子を運び出す時間を考えて、当日の正午に決定することにした。
このときにようやく、中止になるかもしれないという実感が湧いてひやひやしてきた。

つぎに、夜店を出してくれる方々に連絡。お祭りの開催は当日に決めるから、準備や仕込みが必要なお店は先に出店をやめるか、量は減らすことにするか等自己判断してもらうようお願いした。もしもお祭りができてもお店がひとつもない可能性もあるし、準備してもらっていてもお祭りをしないという可能性もあるんだな、とますますヒヤヒヤした。

それから余興に出演してくれる方々に連絡。神社の境内に特設ステージを設けてバンドマンがライブをしたり、お祭りの本会場では地元の小学生が歌やダンスを披露したり、中学生が人形浄瑠璃や箏曲を演奏してくれるのだけれど、雨となると楽器や人形が濡れるから出られないし、子どもさんたちを濡れさせるわけにもいかない。お祭りが開催されても誰も余興に出演できない可能性もあるし、がんばって出てくれようとしたら大事な楽器をだめにしてしまったり、子どもさんが風邪をひいちゃうかもしれないと、本格的にひやひやしてきた。

そして前日は大雨。いつもならこのときに、ある程度搬入したり設営も進めているけれどまったくできない。ほんとうに、びっくるするくらい、ざあざあと雨が降っていた。自分のなかでも覚悟を決めるために、あえて「できない可能性があるね」と口にするようになった。なるべく言わないようにしていたけど、もうそうも言っていられない。明日の降水確率は60%だったり40%だったり。できそうでもあるし、できなさそうでもある。もうどうなるか分からない。会うひと会う人に、明日の正午に町内放送聞いててくださいと声をかけていた。ひやひやが現実にならないように祈りながら。

当日の明け方に雨が降った。なんかの物語みたいだけど、雨の音で目が覚めるほどの大雨。あーーこういうことってやっぱりあるんだな、と思った。ずっとだいじょうぶだったから大丈夫なんじゃないかとどこかで思っていたけど、そりゃあ、そうじゃないときだってあるよなー。残念ですけど・・・って今日これから連絡しなきゃいけないのかー。
なんて思っていたら雨が上がった。予定の集合時間にはもう準備に取りかかれそう。どんよりとはしているけど、やれないわけじゃない。

なんとかやれそう!!!もうやっちゃいます!!!

今度は会う人会う人にやる方向でいきます!と伝えて、みんなで一気に会場の設営を進めた。途中ざっと雨が降ることもあったけれどなんとか準備も間に合って、内容に変更はあったけどなんとかお祭りは開催された。
天気の影響あるかなーと思っていたけど、大人も子供も集まってたこ焼きやかき氷を売って、食べて、子どもたちのダンス見て(中学生の箏曲と人形浄瑠璃は楽器と人形のためにできなかったけど)阿波踊りおどって、花火見て、いつものように大勢で賑わった。
無事に開催されて、本当によかった。お天気の神様ほんとうにありがとうございます。と思った。

なんて小さい人間なんだ・・・

ずーーーーーーーーーっとひやひやしていてどうなるのかなどうなるのかなって、なんどもスマホで天気予報を確認していたのだけれど、町内の人はみんな「雨が降ったらできない、降らなかったらできるね」と言う。当たり前のことなんだけれど、その言葉にとても救われていた。それ以上でもそれ以下でもないし、なにがいけないとかこうしなきゃいけないとかでもなくて、雨が降ったらできなくて降らなかったらできる。誰のせいでもない、そういうものなんだ。
ずっと天気に左右されて、自然とともに暮らしている農家さんの潔さのようなものを感じて、自分のちっぽけさが身にしみた。
便利なものに囲まれていて、自分が損をするとか間違えるとか失敗するとかがないように生活できていたのだ。ナビに頼れば道は間違えないし、検索すれば美味しいお店は見つけられるし、治安の悪いところには近づかないように旅行することもできる。いつの間にか「うまくいく方法は調べれば見つけられるもの」になっていて、だめなときもあるしそれはあって当然なんだ、ということをわたしは忘れてしまっていた。
できないこともあるということを受け入れられるようになると、なんだか私の懐も深くなって、田舎でもどこでも生きていけるようになる気がするな。
まだまだ全然、検索しまくってるけど。

田舎の夏祭りに関わるようになって、お祭りの楽しさだけじゃなく自然のなかでの暮らし方が少し知れた。
あ、あと、花火師さんたちは雨予報の中でも終始「みなさんがお祭り開催されるんでしたら、うちはいつでも打ち上げられますよ!」と、経験の違いと職人さんの仕事を見せてくれてて、これにもめっちゃ励まされた。
かっけーーー!!

読んでくださってありがとうございます。精進料理がきっかけで移住したと言えるくらい精進料理の世界にはまっていますが、食べるものはなんでも好きです!四国は野菜に果物、お魚などおいしいものがたくさんあるので、食べものに使わせていただきたいと思っています。レポートします!