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社会はなぜ子どもを望むのか?#02コンテンツ編〜そして父になる〜

社会はなぜ子どもを望むのか?第二回目も引き続きコンテンツから考察します。
今日ご紹介するのは、映画「そして父になる」です。

そして父になる

都心の高級マンションで暮らす野々宮良多と妻のみどり。6歳になる息子がある日、産院の取り違えによる他人の子どもであることが発覚する。
取り違えた先の家庭は、群馬で小さな電気店を営む。良多は、彼らの荒々しい行動と馬が合わない。息子たちの交換は早いほうがいいという良多意見で、交換が始まる。

Filmarks要約

主なテーマは、家族を結ぶのは血縁か、その時間か。社会はなぜ子どもを望むのかの考察にあたり、このテーマがヒントになると考えピックアップしました。

日本ではいつから血縁を重視するのか?

家族と血縁、という話題において、養子縁組を想起される方がフィルマークスのレビューを見ていても多いようです。
司法統計年報によると、特別養子縁組(※)の数は、その制度が始まった1988年758件、2020年には693件です。一番多い年で1989年の1223件、少ない年で2007年289件です。

※養子となるお子さんの生みの親との法的関係を解消し、育ての親と法的関係を結ぶこと。

現在の日本の総人口からすると、特別養子縁組の数は少ないと私は感じます。

一方で、大学院のメンバーと議論をしているとき、自分たちの祖父より前の世代は、養子はあたりまえだったよねという意見をもらい、調べ始めました。

養子縁組の慣行と家制度

ジェンダー研究所の酒井順子によると、日本では古来より養子慣行が普及していました。例えば家業を継ぐために養子を取ったり、実親の他界などによって養子を取るなど。
農村社会では、複数の大人たち(取りあげ親、乳つけ親、拾い親、へこ親など)が子どもの面倒をみていたそうです。そこに血縁は関係ないように思います。

では、なぜ血縁を重視するようになったのか?これを考えるにあたって「明治民法」が大きく作用します。明治民法が日本制度の大きな分かれ目になるようなので、ここについては今後詳細に記述します。

簡単に説明をすると、近代化に伴い明治民法のなかで「家制度」ができていきました。これは富国強兵を目指すために国民の把握が必要だったからです。
家制度が法的に認められると、家の中の序列が定められ、これがジェンダー観にも影響を与えていきます。

第二次世界大戦敗戦後、日本国憲法ができ「家制度」は廃止されましたが、家制度の慣習は残ったとされています。

<参照>
https://www.waseda.jp/inst/cro/assets/uploads/2021/05/393268fd65b6c9ac802bf799b8649072.pdf

まだまだ考察が必要ですが、このような明治民法による家制度が血縁を重視することへ繋がっているように思います。

人々が本当に血縁を重視しているのか?

「そして父になる」のフィルマークスのレビューに戻りますが、絶対に血縁を重視すべきという意見は今までひとつも見ていません。人々は本当に血縁を重視しているのでしょうか。

人々が血縁を重視していることを裏付ける理由として、特別養子縁組が進んでいない点が指摘されることがあります。

まだ書籍や論文は拝読できていませんが、野辺陽子の養子縁組の社会学―<日本人>にとって<血縁>とはなにかがヒントになりそうです。

野辺さんは、日本では養子縁組が多かった(=血縁にこだわらない)、今では養子縁組しない(=血縁にこだわる)という考え方はかなり事象を単純化したものであり、限界があることを指摘しています。

養子縁組をしない理由は、養子縁組をしたくないのか、養子縁組をしたくてもできないのか。それがなぜなのか。さまざまな要因があり、結果として養子縁組の数が少ないからといって、人が血縁にこだわっているという考えはイコールにならないのです。

ここからはかなり私的な意見ですが、今私たちが生きている令和という時代においては、人々は血縁を重視していないのではないかと思います。
1975年以降、日本では産業構造の変革により、核家族化が進んだとされています。また、家族であっても迷惑をかけたくないという人も増えています。例えば、老後に後見人が必要になった際、実子はいないが、姪や甥に迷惑をかけられないので困っているという声を聴きます。

まとめ

現時点の考察ですが、社会が子供を望む理由として、血縁は当てはまらないと推察します。もちろん、明治民法の影響は少なからず現在でも残っているはずなので、潜在的に人々が意識している可能性はあります。

ヒドゥン・カリキュラム(※)やアンコンシャス・バイアスのような形で潜在意識として血縁が残っている可能性、制度として残されている可能性を今後リサーチしていきたいです。

また、明治民法は結婚制度やジェンダー観に大きく影響を与えているため、ここも今後リサーチしていきます。

※ヒドゥン・カリキュラム:教育の現場で使われる用語。暗黙のうちに子どもに強要され、 暗黙のうちに子どもに了解されているということ。

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