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【読書感想文】姑の遺品整理は、迷惑です

垣谷美雨さんの「姑の遺品整理は、迷惑です」を読んだので、感想を書きたいと思います。

現在実家の片付けを進めている私としては、「そうそう!気持ちわかる〜」と膝を打つ思いで読み進めました。面白かったです。

郊外の団地で一人暮らしをしていた姑が、突然亡くなった。
嫁の望登子は業者に頼むと高くつくからと自力で遺品整理を始める。だが、「安物買いの銭失い」の姑を甘く見ていた。
至る所にぎっしりと詰め込まれた物、物、物。
あまりの多さに愕然とし、夫を駆り出すもまるで役に立たない。無駄を溜め込む癖を恨めしく思う望登子だが、徐々に姑の知らなかった顔が見えてきて…。
誰もが直面する”人生の後始末”をユーモラスに描く「実家じまい」応援小説。

文庫本裏の紹介文より

全編通して楽しめたのですが、その中でも印象に残ったシーン2つを紹介させていただきます。
少し内容に触れますので、ネタバレを避けたい方はここから先は読まない方がいいかと思います。

形見分け

主人公である望登子の実の母も亡くなっています。
片付けられない姑と対比するように、実の母は自分で身の周りを片付けてから亡くなったという描写があります。

「亡くなった時は、机の上に指輪がぽつんとひとつ遺されていただけだった」という一文を読み、これは一つの理想だなと感じました。

望登子の母が亡くなる前に、形見分けについて手紙で知らせるシーンがあります。
価値がある物で、かつ娘が使えそうな物をピックアップし、必要な物があれば、もらってくださいと確認します。
これはできそうでなかなかできないのでは、と思いました。

普通は家にある物はできるだけ捨てたくない、色々もらって欲しい、と思ってしまう気がします。

娘がもらっても負担にならない物、それなりに価値がある物のみ厳選できるのはすごいなと思いました。
押し付けるのではなく、必要であればどうぞというスタンスが素晴らしいです。

夫も物が捨てられない

読んでいてため息が出たシーンがありました。
私の父を見ているようで、気分が悪くなりました。笑

タンスの上に置いてある人形ケースの処分に迷う望登子。人形ケースの中にはコケシ、木彫りの熊、シーサーなど様々な物が入っています。

望登子は念のため写真を撮り、この中に取っておく物があるか夫に確認します。
その質問に対し、夫は「もちろん全部取っておく」と回答。
このシーンは死ぬほど腹が立ちました!笑

主人公である望登子の「この男は本物の馬鹿なのか」という心の声に、共感しかなかったです。

私も実家を片付けていますが、父親もそっくりの反応をします。
明らかに使っていない物、棚の奥底に眠っており存在すら忘れている物。これらを必要か確認すると、「全部いる」と言います。
本当に全部捨てたい気持ちになりますが、父の物なので渋々残しておきます。

望登子は「失敗した、夫に黙ってこっそり捨てるべきだった」と思いつつ、やはり夫の母親が暮らしていた部屋だからと、基本的には夫に確認しつつ処分を進めていきます。

本当に大変だよな、と思います。
自分の実家ならまだしも、姑の家を片付けている。しかも、夫も物をなかなか捨てられない。

現在進行形で実家を片付けている私としては、望登子の気持ちが痛いほどわかります。


望登子を中心に片付けが進んでいくのですが、その中に人間関係のストーリーも織り込まれていて、エンタメとして楽しめました。

「実家じまい」は現代ではよくあることではないでしょうか。
多くの人が悩む問題について、答えを導き出してくれる小説だと思います。

現在片付けをされている方、今後片付けが控えている方におすすめしたい小説です。


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