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経験からのマネジメント論「一緒に成長するチーム」

◆はじめに

私はこれまで多くのプロジェクトで多くのことを学んできました。成功体験、失敗体験その全てが糧となり今の私を形成しています。個人的に学習して学んだこともありましたが、どちらかというと業務中に得られたことの方が多かったと思います。体系化されたマネジメント理論にも教育に該当するものや、チーム運営における(PDCAのような)学習を促すものがあります。

ここでは、チームが成長し自分自身も成長することが出来た経験を元に、マネジメントの勘所を書いていきたいと思います。
が、いざ書き始めてみると言語化するための整理が必要だなと感じたので、元チームメイトの友人とディスカッションをしてみました。思えばその行動こそが「一緒に成長するチーム」の基本かもしれません。

☆スペシャルサンクス☆
前田さん、稲原さん、これを書くにあたっての頭の整理にお付き合い頂きありがとうございました!

やったこと
1.事前に書きだした記事のメインテーマや構成を伝える
2.思い出話をしながら今回のテーマに関する要素を話し合う
  (何が良かったか、何が悪かったか)
3.お互いの理解を確かめながら言語化していく

あと、ここで書いている内容は Google re:Work と重なる部分も多いため、そちらを読んでもらうと正しく理解できるかと思います。


◆一緒に成長するとは何か?

「成長する」と言うと、身体的な成長や精神的な成長などありますが、ここでは知識や知恵を得て成熟するという意味での成長を指しています。そして「一緒に成長する」というのは、単純な個々人の学習や能力アップというよりも、チーム全体の意識の高まりや能力アップを指しています。もちろんメンバが個人的に能力アップすることも含まれます。また、学習すると言っても、学問などを体系的に学ぶだけでなく、経験を言語化して知識や知恵として取り込むこともあります。

マネジメントにおける成長とは、組織を成長させることであり、チームを成長させることであり、個人を成長させることです。これらの成長を促進するための環境を作り出すことがマネジメントの役割となります。
マネジメント論として、どのように成長できる環境を作っていくか、それらを体系的に理解し実践していきたいところですが、人が関わる以上は一定の正解は存在しません。自分が置かれた状況を観察し適切なアプローチをとっていく必要があります。


◆こんな人には向いてません

この記事は「一緒に成長する」がテーマです。そもそも前提としてメンバの意見を聞く気が無い人や、自分の考えが正しいと思っている人は時間の無駄なので、どうぞ戻るボタンで戻ってください。


◆成長できるタイミング、そうでないタイミングがある

こっちの記事に書きましたが、チームには「時期」が存在します。形成期や混乱期のようなタイミングでは成長よりも理解し合うことを優先した方が良いです。或いは混乱期を収めるための方法論として、理解し合うための振り返りの実施などを行うことそのものが成長となるかもしれません。(理解が浅いうちに振り返りをすると却って火花を散らす恐れもありますが)


◆チームの全員が主役

マネジメントとしてチームの成長を促さなくてはいけないと言いましたが、参画するメンバのやる気が無いとそれはそれは大変だろうと思います。マネージャ、リーダー、メンバというのは役割であり、全てがチームを形成するために必要なものです。マネージャがやらなくてはいけない、リーダーがやらなくてはいけないではなく、チーム全体でやるんだ!という文化があると良いですね。とはいえ文化は長い時間をかけて作っていく必要がので、先ずはやる気のコントロールから始めます。


◆意見を出しやすい心理状態にする

人は誰でも(心理的に)損得勘定で物事を判断します。例えば誰かのための行動であっても例外ではありません。そしてその心理を利用することで発言を促すことが容易となります。発言した際に起こり得る心理の損得は以下のようなものがあります。

発言する際の損(デメリット)
〇 発言したことを否定される
〇 発言した責任を問われる
〇 発言が理解されない、認められない
〇 発言したことが実行されない
〇 自分自身が発言に価値を感じない

発言する際の得(メリット)
〇 発言したことが肯定される
〇 発言したことの責任を問われない
〇 発言が理解される、認められる
〇 発言したことが実行される
〇 自分自身が発言したことの価値を感じている

これらは代表例ですが、発言した際のメリットやデメリットは解りやすいものです。メリットを上げてデメリットを下げるだけで発言を促す効果は十分にあります。学術的にはこれらを心理的安全性という言葉で定義されており、一言で言えば成長するチームの環境とは「心理的安全性が高いチームである」と言えます。


◆心理的安全性の確保:信頼し合う

意見を出し合った際に相手のことを認めるためには、お互いをよく知り信頼し合える状態であることが理想的です。信頼し合うのは簡単なことではありませんが、私は以下のようなことを推進しています。

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〇 理解を揃える
チームとは経験の異なるメンバが集まるものです。当然ながら知識や思想も異なっています。業務のベテランや初めて経験するメンバもいるなかで、同じ基準で会話をしていても成立はせず、経験が浅いメンバは取り残されてしまいます。経験が浅いメンバがいる場合は、話の背景などから説明し理解してもらえるようにする努力が必要です。

〇 発言の機会を設ける
例えば「プロジェクトに関わって感じたことを話す」という趣旨で能力に依存しないディスカッションを行うなど、誰でも意見を述べられる機会を設けることでコミュニケーションを促進する。カジュアルに話せる機会が増えるほどお互いを理解しやすくなります。

〇 活動内容を公開する
その日の活動や、起こったことなど、仕事に関係あること・無いことに関わらず公開し合うことで、お互いの性格や思想を理解しやすくなります。


◆心理的安全性の確保:肯定する

せっかく意見を出しても否定されるようなことがあると、次第に発言をすることを避けるようになっていきます。相手のことを否定しておきながら「発言が無い」と言ったところで、心理的なストレスを与えているだけにすぎません。発言の内容がどうであれ、先ずは発言したことを肯定することで、心理的安全性が確保されます。
発言を肯定する際、以下のようなパターンが考えられます。

〇 正しい発言
発言を肯定したうえで、その内容を活かすための検討に入ります。

〇 間違った発言
例えば「その考え方は良いね」という感じで、先ずは発言したことを肯定する。更に大事なこととして、なぜそう感じたのか?を話してもらい、そのうえで懸念として感じたことを伝えます。
発言の詳細を聞かずに「それは違う」と言ってしまったり、発言の途中で遮ってしまうのは良くありません。
なお、あまりにも認識のズレを感じる内容であれば、理解を揃えることに専念すべきです。

〇 何を言っているのか解らない
発言している本人は何らかの意図をもっているため、直ぐにそれを理解できなかった場合は、その発言の意図をしっかりと確認します。

〇 発言するタイミングではない
本人にとって恥ずべきタイミングであれば、発言を遮ってでも止めてあげます。もし、そこまでのことで無ければ一通り聞いたうえで、自然に会話の流れを変えてあげます。

私の個人的な感覚ではありますが、発言を肯定するための秘訣としては、発言そのものではなく、発言するという行動自体を肯定することが重要だと考えています。

余談ですが、、、
子供に対しては「感情を理解する」ことが重要だと考えています。子供というのは精神が未熟で理性よりも感情が勝ってしまうため、自分自身でも発言をコントロール出来ません。
なので、「誰が悪いか?」「何が問題か?」は大事ではなく、「モヤモヤしている」「イライラしている」ということを理解し共感してあげます。これを理解することなく正しさを説いても燃料になるだけなのでやめましょう。


◆心理的安全性の確保:その他の要素

心理的安全性を確保するためには上記以外にも以下のようなものがあります。

〇 実行と反省
メンバの提案を聞くだけでなく実行したうえで反省点を議論します。話を聞くのは簡単ですが、それを実行せずに行方不明になってしまっては、発言したことの価値を感じることが出来ず「どうせ意味が無い」と消極的になってしまいます。
なお、実行する際に提案したメンバに任せるのも良いですが、権限を持っているマネージャが積極的に関わり、マネジメントの権限と責任において実行を支援できると良いです。そうすることで、提案した人、実行する人が適切に権限を扱うことができ、その責任はチーム全体で負うことができます。

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過去の例
韓国のエンジニアとリモートでの打ち合わせする際、議事録等の共有方法としてGoogleドキュメントを利用していましたが、メンバの提案で別のクラウドサービスを使ってみるのはどうか?と提案が出ました。直ぐに私自身でサービスを登録・検証し、メリットとデメリットについてメンバと話し合いました。(結果的には利用上の制約によりGoogleドキュメントを継続利用することになりました)

私はあれこれ悩むより、とりあえず実行する方が良いと考えているので、まずはチャレンジすること、そして成功と失敗について考えて学ぶようにしています。
もうずいぶんと昔の話ですが、数千円のサービスを利用するために何日も時間をかけて稟議を通したことがあります。どう考えても時間と労力の無駄です。私は鋼の心を持っていたので大丈夫でしたが、普通の人なら心が折れていたと思います。


〇 偏りの排除
メンバ内の権限の強弱があったり、複数のマネージャ層が同時に関わる場合に特定の人物の発言に偏ってしまう場合があります。例えば、業務機能の改善を模索する打ち合わせにおいて、打ち合わせの場に業務知識が強い人がいると、その人の発言内容に偏ってしまうような状況です。その人物が話の流れを読めていなかったり、自身の意見を強調している場合は、それ以外のメンバは「自分が発言しても意味が無い」と消極的になってしまいます。
このような場合は、それまでの話の経緯を説明して同じ議論を繰り返さないようにしたり、その人物にはメンバの意見を補完してもらう役割に徹底してもらうのが良いです。
気を付けたいのは以下の要素になります。

〇 経験の差
〇 固定観念の有無
〇 役職などの社内外での立場
〇 性別や年齢
〇 個人的な性格(攻撃的、発言をかぶせてくる など)
〇 派閥


◆成長できる環境と人間の欲求

働き甲斐という言葉がありますが、人間は働くことに意味を求め、それが達成することで欲求が満たされます。意味を持たずに働いていたり、それを達成することが出来ない環境だと働き甲斐は感じられないでしょう。もしかすると、会社や仕事には求めておらず、プライベートな趣味で欲求を満たしているかもしれませんが、人生の大半が仕事で使われることを考えると、働き甲斐を感じられる環境の方が幸せだととれます。

働き甲斐を感じられる環境というのは、以下のような状況です。

〇 仕事により何をしたいのか理解している
〇 自分が何をすべきか理解できる
〇 自分が意見を言える立場である
〇 自分の意見を理解してもらえる
〇 仕事によって何かに貢献できる(貢献していることが見える)
〇 仕事によって自身の生活が豊かになる
〇 仕事によって誰かと共有できる

これらは、社会的な存在意義を感じたい欲求、誰かに認めてもらいたい欲求、夢を叶えたい欲求などで説明されます。マズローの法則でいうと社会欲求、承認欲求、自己実現欲求などが該当します。
人は必ず欲求を持っており、チームが一緒に成長できる環境を作ることで、それが満たされることになり、プラスの循環を生み出していきます。


◆さいごに

チームの目標として一緒に成長することを定義し、マネジメントの権限においてその環境を整える。発言を活性化し、実行し、反省する。これを繰り返すことでチーム全体が成長する文化となります。そこで働く人、関わる人たちが同じように考え文化を作っていけると良いなと思っています。


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