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人の価値は優しさ

ふたりは静かに見つめ合っていた。


羨むように
物欲しげに
愛しさをもって

触れたいと
一つになりたいと
焦がれていた。

けれど互いに手を伸ばしはしない。

触れれば互いにかき消し合い、存在を傷つけあってしまうから。

彼の名は統制。

彼女の名は自由。

ここは陰陽の世界。

何かがあるとき、反対のなにかも存在する。
それはつまり、反対の何かがなければ物事は存在できない、ということ。

故に統制と自由は互いを求め、一つになりたいと願いながらも見つめ合うことしかできなかった。

正義と悪

伝統と革新

女性性と男性性

こどもらしさと大人らしさ

悲しみと喜び

愛と憎しみ

嘘と真実


それらもずっとそうだった。
この世界で正反対同士、強く求めながらも手を伸ばすことができず悲しみに暮れていた。

しかし、そのような相反する者たちが唯一手を取り合える場所がこの世界では存在する。


それはあなたの心の中だ。


あなたの心の器が広ければ相反する者たちを内包し、そこで彼らは手を繋ぐことができるのだ。

そのときあなたは複雑な美しさを放つ稀有な存在へと変わる。

心の中にまるで天変地異のように優しさが押し寄せてくる。

それこそが人の価値。

いつか書いた、多面性への理解こそが美しさ、の意味となります。

そして非合理主義の境地(救世主)、ということです。



しかしそこへは、悪魔から渡された常識という器を持っていては辿り着けない。
むしろ辿り着けないように常識という器を手渡すのです。


だからあなたは知恵の実を喰らわなければならない。
悪魔たちから渡された器を手放すために。

けれど知れば知るほど知らないことが増える。
知らなければよかったと思う。
知ったからこそ焦り、怒り、憎しみ、不安を抱く。
辿り着くべき優しさへは遠のいていくように思える。

だからこそ、知恵の実を食べたことは原罪とされました。

だけど信じている。

あなたならまた戻ってこられると。
たくさん知って、
焦って、怒って、憎んで、不安になって、
それでもまた笑えると。
複雑な美しさを放ちながら、
まるでこどもみたいに笑うあなたがそこにいる。

信じているから。

あなたが優しさという境地に辿り着けること。



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