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『アラビアン・ナイト 三千年の願い』

綺麗なポスターに惹かれて、前情報は全く入れずに鑑賞。ティルダ・スウィントンの演技を観たことがなかったからそれが観たかったというのもある。ティルダ・スウィントンは赤とボブが似合う美人だった。

 前半はジン(魔人)の過去の話、後半はアリシアとジンの2人の物語。始めは、あまりにジンの回想が長く詳細かつ多様であるため物語の主眼が過去の回想なのか現在の話なのか分からず困惑したが(そこで眠くなってしまう人もいたみたい)、次第に回想シーンの美しい情景とその物語に引き込まれてしまった。

 回想パートで思ったのはもっと教養が必要だなということ。ソロモン王とシバの女王の話は名前が聞いたことあるだけで「実は訪ねたのはソロモン王の方だったんだ」とか言われてもピンと来なくて知識不足が悔やまれた。オスマン帝国の話も、母が昔オスマン帝国版大奥みたいなドラマを見ていたおかげでヒュッレムやスレイマンは分かったが、時代が下ってムラトやイブラヒムとなると???だった。まぁ知らなくてもお話は分かるし楽しめる。美しい衣装やセットを見るのが歴史ものを観る楽しみでもあるので、そこは満足。

 現代パートでは、ジンが様々な情報や音や電磁波が飛び交うロンドンでそれらに苦しむ描写がある。これは即ち、冒頭の学会発表?シンポジウム?のシーンでアリシアが物語論研究者として語っていた、神話や伝説といった物語はやがて科学によって取って代わられるということをそのまま表している。
 しかし、一度科学文明に順応できず姿を消したと思われたジンは、定期的にアリシアの元を訪れ、体が耐えられる期間だけ共に過ごしているという。これはきっと、科学と物語の共存を示唆しているのだろう。

 また、日本語での副題であり原題の和訳でもある「三千年の願い」は私はジンの愛する人と共に過ごしたいという願いなのでは、と思う。もしかしたら、3つの願いを叶えてあげて解放されたいという願いなのかもしれないけれど、ラストのジンの表情を見るとこの映画のテーマは愛なのではないかなと思いたくなる。

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