見出し画像

容姿について

悩みというほど深刻なものではないが、私の中で呪いのようにへばりついて取れない言葉がある。

それは小学生のとき、クラスメイトの男子に言われた「頭良いのに顔普通とかw」という言葉だ。

その言葉を受けるまで、私は自分の容姿が特に可愛いとか可愛くないとかは考えておらず、気にすることもなかった。でも、あの言葉は「頭が良い=可愛いのが当たり前、私はその当たり前に入らない、普通ってことは可愛くない」と幼い私の心を深く傷つけた。

それ以来、人に可愛いと言われても信じられなくなった。小学生男子の歯に衣着せぬ言葉がいちばん私の状態をストレートに表現しているのではないかと考えてしまう。確かに、鼻は団子鼻だし求心顔で横顔ブスだしエラが張っている。

その呪いは、この発言をした男子がそんなことをすっかり忘れて高校生になった時、私に「付き合わない?」とLINEで軽薄な告白をしてきても消えることはなかった。

高校生のとき、同じ部活でとても仲の良い子がいた。その子はすごく頭が良くて(偏差値70の高校でトップレベル)、見た目もかわいらしかった。性格もすごく良い。一緒にいて楽しい子ではあるけれど、時折コンプレックスが刺激される。一緒に自撮りをするとその子の華やかな目鼻立ちや顔の小ささがよく分かる。

学生のときは、「可愛い子」はそれ相応の扱いを受ける。「あの子可愛いよね」と話題となり、何もしていないのに学年全体に顔と名前が知られる。それが普通だし、思い上がるなと思われるかもしれないけれど、ここでもやっぱり私の見た目は可愛くないんだ…と現実を突きつけられる。

大学生になり、メイクをするようになった。1年生の頃のメイクはいまや見ていられないほど下手だなと思うけれど、それに比べたら4年生となった今はいくらかましになったと思う。自分にはどういうメイクが合っているのか、ということが少しずつ分かってきている。

メイクが少しこなれてきた2年生の時、彼氏ができた。彼氏は自分の見た目にも人の見た目にも頓着しない人で、だからその彼に「可愛い」と言われても「彼女だから可愛く見えているんでしょ」と素直に受け取ることができない。出会ってから付き合うまでの半年間、私は彼に一目惚れをしてずっと好きだったけれど、彼が私を恋愛対象として意識し始めたのは付き合う1か月前くらいからだから、なおさら「可愛い」には信憑性がない、と思ってしまう。見た目に惑わされない、という点では他の人に目移りしないという意味で安心はできるけれど。

メイクが上達したからなのか、大学生になって一人暮らしをして2,3キロ痩せたからなのか、容姿を褒められる機会が急増(当社比)した。バイト先のパートさんには「マスクしてないから気づかなくて、すごい美人さんきた!と思ったよ~、マスクない方が綺麗ね!」、行きつけのバーのイケおじには「隣で一緒に歩いていたら自慢になるくらいお綺麗だよ」なんて歯の浮くようなお褒めの言葉をいただいた。

呪いの言葉の話をしていたのに、自慢話みたいになってしまった。でも、嬉しかったんだもの。それまで私は可愛い側の人間じゃないと思っていたから、お世辞でもあんな風に容姿を褒めてもらえるのが嬉しくてたまらなかった。それ以来、少しだけ自分のことを好きになれた気がする。

いや、自分の見た目を気にしている時点で、私は自分のことをかなり好きなのかもしれない。少々自意識過剰な点はあると自覚している。呪いの言葉が取れないのも、自分の見た目を必要以上に気にしているからなのだろう。

とにかく、私はたぶんあの呪いの言葉を背負って生きてはいくのだろうけど、それと同じくらい、嬉しい褒め言葉も大事にしていきたい。

嫌な思い出と嬉しかったことを一緒に書こうとしたらまとまりのない話になってしまった。もっと自分を認められるように、綺麗になる努力をしていく。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?