ニュータウンの暮らしを紡ぐ~南港ポートタウンにて
ベイエリアの理想の住宅団地
大阪市住之江区の臨海部に、「南港ポートタウン」というニュータウンがあります。開発面積は約100ha、計画人口4万人で、昭和52年から入居が開始されました。
ベイエリアの新しい市街地開発で、新しい都市交通システムや都市インフラを備え、都心型や郊外型を脱皮した水と緑あふれる未来の住宅地としてまちびらき。それから40年近く経過しました。
今でも、大阪市内とは思えない豊かな緑がまちじゅうにあふれ、地区内はノーカーゾーンとなっており、子どもたちも安心して歩ける環境。大阪都心にもほど近い、非常に魅力的な住宅地です。
しかし、人口減少・高齢化が顕著に進み、平成2年の32,036人をピークに、平成27年は20,686人まで急減。高齢化率も31.3%と非常に高く、20年後はさらに半減する予測となっています。この現象は、同時期に一斉入居したニュータウンではどこも共通したものですね。
自分たちの子どもが「住みたい」と思えるまちに
こうした状況に際して、まちの住民が危機感を持ち、「若い人たちが住んでもらえるまちにしないと、このまちが維持できなくなる」「自分たちの子どもが『ここに住みたい』と思えるまちにしたい」と考え、住民によるプロジェクトチームを発足。
・まちの魅力向上のプロモーション
・「教育」「健康」「暮らし・にぎわい」をキーワードにした事業の展開
に公民が連携して取り組んできました。
魅力向上のプロモーションでは、ポータルサイト「ナンコウスタイル」を立ち上げ、地域の魅力的なひと、できごと、風景を紹介。また、プロモーション動画をつくり、ニュートラム(交通機関)やショッピングセンターで放映しアピール。
健康では、学校・スポーツチームとコラボレーションした健康づくりプログラムの実施や、ランニングコースとして使いやすくなるよう周辺緑道の改修。
教育では、地域イメージを向上させる小中一貫校の誘致など。
ポートタウンの魅力を引き出すマーケット
そして、この南港ポートタウンの環境の魅力を引き出し、エリアの価値を高め新しい動きを生み出すしかけとして、緑道を使ったマーケットを開催しています。
コンセプトは、「DIYとみどりでつくる、豊かな暮らし」。素晴らしい団地(まち)やみどりを、もっともっとたくさんの人に楽しんでもらいたい。そこで、高感度の“住まい手”と、こだわりのある“出店者”が出会うマーケットを2ヶ月に1度、開催しています。
扱うものはハンドメイドの雑貨・小物や、こだわりの食品・飲料が中心。子どもたちが体験できるワークショップブースも設けています。例えば美味しい手づくりパンなど、南港ポートタウンの暮らしにほしかったけど、なかったものでした。
最初は小規模からスタートしましたが、最近開催された回では40店舗まで増加。固定的なファンもついて、南港ポートタウンに定着してきました。
当初、出店者は外部の方が中心でしたが、近くに住む主婦の方がクラフトを出店したりといった、「新しい商いのチャンス」の場にもなっています。
アメリカのポートランドもファーマーズマーケットが地域の魅力となり、ライフスタイルを創造する場となっているのと、共通する部分が多いと思います。
住みたいまちを自分たちでつくる
ニュータウンは、どうしても”供給されたまち”というイメージが強いのですが、このように自分たちの暮らし、まちを自分たちでつくる、まさにDIY的発想で取り組むと、まだまだ面白いことが生まれてくる可能性がありそうです。これをどう継続的な仕組みにしていくか、引き続き考えて行けたらなと思います。
そして、本当のニュータウン再生には、老朽化しつつある住宅や地区センターの更新と、新たな機能の導入が不可欠です。
この南港ポートタウンは住宅は全て共同住宅で、新たな開発の余地も生まれていない状況ですが、「マーケットがあり、若い住民がイキイキと暮らし、子育てもしやすいまち」「いい教育が受けられるまち」「お年寄りから子どもまでのつながりが温かいまち」として認識され、エリアの価値を上げていく取り組みとリンクして、都市機能の更新も両輪で進んでいく、そんな再生の戦略が大事だと考えています。
大阪万博も決定し、ベイエリアは大きく変化していくことでしょう。このポートタウンも、その機会に、まちの価値をリブランディングしていければ、と思います。
参考:
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