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『平家物語』

平家物語がアニメ化し、声優陣もPVの映像もかなり好きな感じだったので見てみた。

平家物語を知っていても、知らなくてもどっぷりとその物語に浸からずにはいられない。そんなアニメだった。


あらすじ

幼い「びわ」は、平家の権力が横行する世で琵琶法師の父親を殺される。父親が平家の武士に殺されるその時、びわには平家が滅びる瞬間が目の前に広がった。びわの片目は色が違い、先を見ることができる。行き場のなくなったびわは父親の持っていた琵琶とともに、平家の屋敷に潜り込む。「平家は滅びる」と平清盛の長男、重盛に伝えるために。しかし、重盛はその言葉を受け止め、びわを屋敷で養うことにする。父の仇であった平家一門と暮らし、家族になっていくびわ。しかし、歴史は幸せに進まない。





「未来が見える片目を持つ」の設定がいかにもアニメの世界で好きである。平家物語を「アニメ」たらしめるオリジナル要素なんじゃないかと個人的に歓喜した。びわと一緒に育った平家の兄弟たちが、平家の滅亡が近づくにつれてその最期をびわの目に映していく。

重盛の長男である維盛がこれまた可哀想な男の子。心優しく文芸に秀でていたが、長男であるがために戦場に駆り出されて心をすり減らしていく。見ていて不憫でならない。最期は平家から逃げ、僧侶の姿で海に身を投げる。怖がりである彼の心を、合掌する震える手で表現していたのには胸がキュッとなった。

そして、平家物語といえば平敦盛ではないだろうか。笛の名手で若くして命を落としたことは知っていたが、実写とは違うドラマチックな展開がその最期に込められていた。水面に揺れる光がキラキラと反射し、穏やかな海を敦盛が馬を走らせる。呼び止められ、振り向く。敵の髭面の猛将は、血気盛んに敦盛へと戦いを挑み、静に闘志を現す敦盛。海に薙ぎ倒され、「首をとれ」と言う敦盛を見た猛将はその美しい若武者に息子を重ねる。


各々の最期があまりにも美しく描かれ、びわの躍動感ある琵琶歌がそれらを真っ直ぐに見るものに伝える。滅びると分かっていても、見ることを止められない。虚しく、苦しい展開だが彼らの行く末を祈らずにはいられない。貴族社会に染まったから平家は滅んだのだろうか。戦いが何を生むのかを考えさせられてしまう。

安直だが、日常の他愛のない会話や小さな幸せを見つめて生きていきたい。


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