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少しだけ、君の命をくれないか?

時間は、命だから。
今、少しだけ、君の命をください。


むかしむかし、あるところに、二人の子どもがいました。
一人は、世界に消えてほしい子。もう一人は、世界から消えたい子。

世界に消えてほしい子は、たぶん、この世界とそこにいる自分が嫌いになってしまって、世界が丸ごと全部消えたらいいのに、と思っていたのだと思います。

世界から消えたい子は、たぶん、この世界が好きでも嫌いでもなくて、そんな自分は消えてしまっても構わないんじゃないか、と思っていたのだと思います。

世界に消えてほしい子は、とりあえず、この世界から別の世界へ移ることにしました。
その後、どうなったのかは、わかりません。

世界から消えたい子は、今も、この世界に残っています。
たまに、楽しくて、たまらなくて。たまに、辛くて、たまらなくて。

でも、この世界に、います。
惰性かも、しれないけれど。



ふと、世界から消えたくなるときがあります。
今、ここからいなくなっても、気づかれないんじゃないか。
ここにいなくても、いいんじゃないか。
このまま、朝が来なくても、かまわない。
そういう、なんか、もう、どうでもよくなるとき。

こんな話、聞きたくないかもしれないし、気分がいいものではないかもしれないけれど。
今日は、 8 月 31 日だから。
夏が、終わるから。
そういう、こじつけみたいなきっかけがないと、この気持ちに向き合おうとすらしない、そんな大人になりました。

世界から消えたいと思う人が、ほかにもいるとして、その人たちがみんな、同じ気持ちだとは、思いません。
ひとり、ひとり、心が、ちがうから。
そう思うきっかけがあった人もなかった人もいて、たまに思う人もいればいつも思う人もいて、それを辛いと思う人もいればいつも通りだと思う人もいて……。

この気持ちについて、話すときに、一番重要なのは、今書いたような、きっかけの有無や、頻度や、度合いじゃなくて、その気持ちが、あるか、ないか、なのだと思います。

ただ、私には、これ以上、この気持ちについて、あれこれ言うことは、できません。
私自身が、まだ、この気持ちのことをよくわからないし、この気持ちをどうしたいのかもよくわからないからです。

でも、わからないけれど、同じような気持ちの人が、この文章を読んだとき、同じような気持ちの人がいるのだと、この気持ちやこの気持ちとの付き合い方をわからない人がいるのだと、それを知ることになる文章になればいいなと思って書きました。



世界から消えたい君へ

君にとって、必要な言葉をかけられなくて、ごめんなさい。

この文章を読んでいた数分間、君の命が、ここにあったことを、幸せに思います。

最後まで読んでくれて、ありがとう。

また、ね。

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