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固定観念

映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』を観た。
昨年上映されていた映画なので、タイトルを知っている人や映画館で観た人もいると思う。
私は、先日、アマプラの配信で観た。

簡単にあらすじを紹介すると、ある時突然、戦時中の日本にタイムスリップした女子高生が、そこで特攻隊員の青年と出会い恋に落ちる、というもの。
女子高生を福原遥さん、青年を水上恒司さんが演じている。

私は、普段、あまり戦争をモチーフとした作品と積極的にかかわる方ではない。
戦争が持つ重苦しさや凄惨さに耐えられない、目の前が戦争一色になるのを避けたいと思う。
しかし、『あの花が~』は、話題になっていたことと、以前知覧の特攻平和会館に行ったことを思い出したこともあり、観ることにした。

主人公が現代の女子高生ということもあり、その気持ちに共感する場面が多かった。
また、恋愛映画でもあるので、映像にはさわやかさを感じられる雰囲気もあり、親しみやすいと思った。
原作や公式サイトをチェックしなかった初見でも、十分その世界に入り込めた。
月並みな感想で恐縮だが、観てよかったと思う。

鑑賞後は、ベッドに横になり、余韻に浸るのがお決まりである。
じんわりと頭に浮かんだのは、「もどかしい」だった。
私にとって、意外な感想だった。

私は、勝手に、戦争モチーフ作品に触れると、悲しさ、虚しさ、怖さ、つらさ、そういう感情を抱くのだろうと思っていた。

本当は、こういうことを言ってはいけないと思う。
でも、私の生の感覚を言葉にするのなら、戦争は、教科書や小説やドラマや映画や資料館で扱われる出来事だと思っていた。
いや、今、現在進行形で戦争が起きている地域もあるのに、まだそう思っているところがあると思う。
だから、デフォルメされた感情、たぶんこういう気持ちになるだろうと、感想の予想を立てていた。

しかし、予想していた感想に加えて、もどかしさが私を覆った。
私は、戦争が一九四五年の八月には終わり、日本が負けること知っている。
それなのに、もう少しで戦争が終わるという時に、大切な人と離れて、あくまで自らの意思で、青年が、特攻隊員として飛び立っていくことに、どうしようもないもどかしさを感じた。
主人公は、せめて、愛する人と一緒に過ごす日々を守りたかったのだろうと思った。

私にとって、この映画は、戦争へのイメージを更新させてくれた。
戦争は教科書に載るような出来事であると同時に、そこに生きた人々がいて、それぞれに感情があって、多くの人と同じような経験をした人もいれば、そうではない人もいて、生きた社会、生きた世界で、戦争も生きていたのだろうと思った。

私は、戦争を語れるほど、知識がない。
そして、まだ、戦争を知る恐怖のほうが強い。
でも、終戦から八十年足らずで、すでに二二歳の自分の中に戦争への固定観念が形成されていることには、違和感を覚えた。
この事実は、忘れないようにしたい。

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