読書感想 悪いヤツほど出世する ジェフリー・フェファー著

 前回のジェニファー・フェファー氏の著書「権力」を握る人の法則に引き続き今回は「悪いヤツほど出世する」をご紹介したいと思います。
 本書では著者が世にはびこる「リーダーシップ論」に物申し、組織を動かす人々の「本当の姿」を明かした一冊です。皆さまの考えるリーダーの「あるべき姿」は、誠実で、謙虚で、思いやりにあふれるといったものだと思われます。
 しかし残念ながらそんなリーダー像は、現実社会の組織では指導的立場についていたりしていないのです。本書では真のリーダーの姿を紐解き、私たちがそれにどうやって対処すべきかを教えてくれる一冊であり、組織で働くひと、サラリーマンには必読の一冊といっても過言ではないでしょう。

今回の学びポイントはこちらの3点です↓

・ナルシスト型行動は出世に有利
・心理学的には、「つねに自分らしく」は不可能
・組織の現実と向き合うための、6つのヒント

 1つ目のポイントであるナルシスト型行動は出世に有利ですが、結論から言えば控えめリーダーはほとんど存在しません。アメリカの大統領や会社のCEOなどは比較的ナルシズムが高い傾向があり、またナルシズムが高い人ほど報酬を多くもらい在職期間も長いと述べられておりました。さらに組織の統率力や組織の出す生産性の高さについてもナルシズムの高い人間が率いた組織は比較的高い傾向があるそうです。
 そんな万能感のあるナルシズムですが欠点として倫理観の欠如や他人の話を聞かないなどのコミュニケーションスキルに弊害がでることも述べられておりました。理由としてナルシズム型のリーダーは自身を上手くアピールすることに長けており、他人からの高評価を出しやすいため自信過剰になるからだと推測されています。
 謙虚な人とナルシズムが高い人いったいどちらがチームのリーダー候補に選ばれるかと言えば可能性が高いのはナルシズムが高い人だと言えるでしょう。前述したとおり彼らは自分自身のアピールがうまいため相手に上手く売り込むことが可能であるからだ。
 アメリカ大統領しかり有名なリーダーはみなそろってナルシズムが高い傾向にあった、彼らの職種と地位がナルシズムを上げているのかもしれないという考察もある。実際に大統領就任前と就任期間中では、就任期間中のほうがナルシズムが高い傾向にあったと本書では述べられている。

 続いて2つ目のポイントである”心理学的には、「つねに自分らしく」は不可能”です。「三つ子の魂百まで」という言葉がありますが、この言葉は人間の性格は若いうちに形成され、その後は変わらないという言葉です。しかし現実では人間は自分の置かれた役職や環境などで性格が変化すると述べられていました。
 これは私の例でありますが、監獄を舞台にしたスタンフォード監獄実験という映画がとてもいい例だと感じます。なぜならあの実験では囚人側と看守側に分かれて数週間ほど生活をするというものでありますが、最初はとても温厚でやさしかった看守役の黒人が日に日に性格が変わり囚人を痛めつけたりなどして快楽を感じていたのです。
 本書の中の例でいうと年功序列を好む組合役員チームと実績重視の職長チームで分かれさせ、その後お互いの役職を入れ替えるという調査が載っていました。結果として入れ替わった後はお互いの考えが入れ替わり、元組合員(現職員)は実績重視となり元職員(現組合員)は年功序列を好むようになったそうです。さらに面白いのは再度お互いの立場を入れ替えると考えも同時に入れ替わると発見されました。
 つまり人間の性格なんてその場で簡単にころころ変わってしまうので常に一定なんて不可能という事です。言い方が悪いですが1人の男性が結婚して奥さんがいたとしても職場に美人の新人の女の子が入れば、今まで奥さん糸筋だったけど火傷したくて不倫しちゃうみたいなもんです。女心と秋の空といいますがこれも上記の例に当てはめれば少しはつじつまが合うのではないでしょうか。

 最後の学びポイントですが「組織の現実と向き合うための、6つのヒント」です。先に6つのヒントを書き出していくと

・規範と事実を混合しない
・他人の言葉ではなく行動を見る
・必要悪も必要
・リーダーシップにおいて普遍的なアドバイスはいらない
・「白か黒」で考えない、グレーをみつける
・許すこと、しかし絶対に忘れないこと

 規範と事実を混合しないということは、リーダーシップ本で書かれたことは規範であり、現実世界で起こったことは事実である。つまり書かれている通り行動したところで実際に上手く行くとは限らないのだ。実際のリーダーは悪人が多い、それこそ本に書いている人間などほとんどいないのだ。
 他人の言葉ではなく行動を見るとは、実際のリーダーをよく観察して本当に彼らが言葉通り物事を遂行しているのかを判断することです。正直大半のリーダーは言葉通りに行動してません。うまい具合に周りに見られないようにしているのです。言葉なんてだれでも言えます、だからその発信源を良く観察しましょう。
 必要悪も必要。リーダーはまず全員からは好かれません、かならずと言ってもいいですが反対意見があるのです。しかし全員満足なんて不可能なのでリーダーは一部の反対をつぶして行動すべきなのです。アメリカ元大統領 エイブラハム・リンカーンを例に取り上げてみましょう。彼は南北戦争時代に北軍を率いて奴隷解放宣言を行いました。しかし彼は目的達成のためならなんでもする老獪な人間です。自らの権力を乱用し政府のポストを反対反対派に明け渡すなど裏工作をいたしました。彼の行動がマキャヴェリの真実で説明がつきます。偉大なことを成し遂げるには犠牲は同然であるし、それは必要悪なのであると。
 4つ目にリーダーシップにおいて普遍的なアドバイスはいらないでありますが、リーダーは状況により求められることが変わります。なので本に書いてある一般論のリーダー学的アドバイスはいらないのです。大事なことはその状況でどのようにして高い地位に立ち、どのようにしてその地位を維持し、自分の置かれた状況で必要な能力や行動を示すことなのです。
 5つ目、「白か黒」で考えない、グレーをみつける。まず物事を白黒はっきりつけるのは現実世界では無理です。映画の世界(スターウォーズとかアベンジャーズとか)は結局作り話なのでどうこうできますが、現実は違います。なぜなら現実世界は複雑で手で取れない、いわば水に近い空気なのです。有名な本である「ビジョナリーカンパニー 時代を超える生存の原則」でも二者択一を批判しているのだ。単純化は一見して楽に見えるかもしれませんが、現実ではそんなのは無理話なのでさっさと諦めてグレーを見つけましょう。
 最後に許すこと、しかし絶対に忘れないことですが、人を許せばその人もそのことを忘れずにいられます。そしてその周りもその事実を忘れないでしょう。許さなければその問題は半永久的に続いていくのです。本書のなかではたくさんの著名人の悪事が書かれており、悪い結果を引き起こす原因はその著名人らの悪事を許さなかったからであると述べられておりました。

 まとめとして今回ジェフリー・フェファー氏の著書2冊目をご紹介いたしました。世間で言われているリーダー論は結局夢物語であり、映画でいう所のSFに近いものであると学ぶことができました。鳩のように素直でヘビのように狡猾であれという言葉が私の座右の銘でありますが、この考えを捨てずに社会人として、そして一人のサラリーマンとして進んでいきます。


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