見出し画像

読書感想文だってラブレターだ〜「心をつかむ超言葉術」を読んで

お笑い、音楽、映画などのエンタメが好きで、創作する仕事に興味はあるし、本当はそういう感動をつくる仕事をしてみたいけど、それは特別な人がするもので、自分には無縁の世界だと思い込んでいたかつての僕みたいなあなたへ。

まって、これ私じゃん・・・

コピーライター阿部広太郎さんの最新著書「心をつかむ超言葉術」を読み、冒頭から苦笑してしまった。「あれから手が止まっていませんか?」そう叱咤激励された気がしたから。そして半年ぶりにnoteを更新することにした。

ちょうど2年半前、阿部さんの主催する「企画でメシを食っていく(通称:企画メシ)」という講座に通っていた。最後の発表テーマは「自分」。私はそこで初めてみんなの前で「エンタメを作る側」へ強い憧れがあったこと、諦めきれずに企画メシへ来たことを打ち明けた。かつて自分が音楽・映画で心を突き動かされたように、誰かの心を喜ばせたかったのだ。発表の締めには「これからは自ら企てて発信してゆく」と宣言したのも覚えている。

で、現在2020年2月末。私はあの頃と同じ会社で、相変わらず“誰かの作ったエンタメ”を宣伝している。やるやる詐欺だ、と言われても否定できない。しかしながら確実に変化はあった。日々の些細な仕事の中にも、誰かの気分や感情を動かす企てが必要なこと、その連続の先に実りがあると気づいたのだ。そこでも一番頼れる手段は「言葉」だった。

「心をつかむ超言葉術」には、勝負がかかった企画書にも、たったいま返そうとしている友人へのLINEにも使える言葉のヒントがある。すべては阿部さんがコピーライターとして、作詞家として、そして生活者として言葉に向き合ってきた実体験から生まれている。どこを切っても、誰かから聞きかじったようなノウハウはない。ただの“ハック”に終わらないのが阿部スタイル。316ページにわたってアツく問いかけてくる。

選んだその言葉はベターではなくベストなのか。伝える相手への愛はそこにあるのか―やはり“情熱とか嫌いな人には、悪夢の男”である。

例えば「素敵」「すごい」「エモい」。これらのイイ塩梅に仕上げてくれる“味の素ワード”を使わずに一歩踏み込んで考えると、より深く伝わる言葉が生まれると阿部さんは言う。どんな部分を良いと思ったのか、それを目の前の人にどう受け取ってもらいたいのか。

「人は面倒臭がりで、面白くないものはすぐスワイプ」――自分もそうであるのに、いざ誰かにメッセージを伝える時、つい超ポジティブなってしまいがちだ。”フツーに分かるでしょ”と悪気なく胡坐をかく。

かつて美輪明宏さんも仰っていた。「ありのままで受け入れて、なんてムシがいいのよ。泥だらけの大根を突き出してさあ食えって、失礼だと思わない?」。大勢の人に見せる広告コピー、親友へ送るメッセージも”泥大根よりふき大根”。受け取ってもらうには気配りと工夫が必要だ。ともすると言葉選び一つで単なる伝達事項が嬉しいギフトに変化したりする。私も口癖「めっちゃいいですね」をしばし封印することにした。(もし口にしたらツッこんでほしい)

そして本の中で個人的に一番刺さったのは「自分なりの定義づけ」の重要さについて書かれた章だ。全ての面白い企画、強いコピーの原点なのではないかと思う。自ら経験したり、現場に足を運んだり。そうやって見つけた問いと仮説、そこから生まれた定義(結論)は誰にも真似できない、その人ならではのもの。「感動をつくる仕事」を目指す人、すでに始めている人には一読の価値ありだ。

本を閉じ、ふと考えてみた。そもそも「感動をつくる仕事」ってなんだろう。手に汗握るハリウッド映画、思わず泣ける名作小説だけが“それ”じゃない。もしかしたら名も無い誰かが書いた作品レビューだって、作り手やこれから体験する誰かへ伝われば“それ”なのかもしれない。

だから私は定義する。読書感想文だって想いを届けるラブレターだ。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?