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勇者と魔王と聖女は生きたい【90】|連載小説

「うまく、説明できるか不安なのですが……」

ぎゅ、と手を握り締めて話し出したティアだが、その言葉の通りどう説明するか迷っているらしく、しばらく間が空いた。

「おかしかったんです」

「おかしい?」

「昨日、お会いした人たちの女神の予言が」

「ひと、たち?」

「えぇ」

複数系のそれは、いったい誰を刺した言葉なのだろうか。
検討もつかない僕に、心得ているティアは頷いて指折り数えながら説明する。

「まず、イリヤ様」

「……あ」

そうか。まず僕たちが助太刀に行く前にひと悶着あったのだ。
女神の預言にとって死ぬ定めだったとしたら、僕たちのせいで"擬い物"になってしまったかもしれない、助けてもいいのだろうか、と。

「もしかして、イリヤ様はあの時……」

「いえ、違うんです」

「ち、ちがう?」

イリヤ様が僕たちのせいで"擬い物"になった最悪のパターンだったのか、という懸念を否定されて、僕は肩透かしをくらった気分になった。

「あの時、私たちが助太刀に入った時、まだ、護衛の方がイリヤ様を守っていたでしょう?」

「え?うん、負傷者はいたけど、まだ持ったんじゃないかなぁ」

それに僕たち以外にもすぐ助太刀が来たから、僕たちが来なくても助かっていた可能性のほうが高い。
だから"擬い物"にはならなかったのだろうと、今日までスルーしてしまっていた。

「私のこの目は、本人がお亡くなりになるまで、女神の預言が見えるのです。なのに、なのにイリヤ様には……助太刀に入った時から、女神の預言が見えなかったのです」

「……え?」


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