見出し画像

勇者と魔王と聖女は生きたい【66】|連載小説

「っていうか、ウェルが特訓する意味あるの?」

「えっ」

土人形との特訓を終えて休んでいた僕に、エルが疑問の声を上げた。
まぁ、僕が今の実力以上に剣の腕が上げられるのかというと、確かに疑問ではあるのだが。

「あ。そういう意味じゃなくて……ウェルって勇者なわけじゃない?少なくとも人間相手には負けなしでしょ」

「あぁ。そういう……」

「これ以上、アンタが強くなる意味があるのかって話」

「あ、いや、厄介なのはどちらかというと魔族側だよ」

「魔族側」

スン、と表情をなくすエルの様子も気になったが、これから旅をする上で、僕たちの敵対勢力の一つを話さないわけにもいかない。

「エルも魔王城で戦っただろう?魔王の配下の四天王たちと」

「……あーーーー」

「エル?」

エルが頭を抱えて、しゃがみこんだ。
珍しい反応に、本人以外が目を瞬かせる。

「アイツか、あの銀髪の」

「ルーファウスだな。私の配下は強かっただろう?」

自慢げに言うのはマオだ。
いや、今やマオの配下ではなく僕たちと敵対するのだから、その自慢分、僕たちは面倒なのだけれど分かっているのだろうか?

「出鱈目な強さだったわ。何なの?軽く剣を振ったように見えたのに、私の魔法を斬って消されたし、ハイスなんて遊ばれてたわよ」

「ソイツに僕は狙われてるんだ」

「うっわ」

「うわ?」

「悪いことは言わない。逃げに徹するべきだと思うわ」

「エルが、逃げ……?」

「命に変えられないもの」

「そこまで……」

エルがそこまで言うほどの実力。
魔王よりも強いといわれる魔族……改めて、その存在に狙われていることに、僕はゴクリと唾を飲んだ。

そんな僕の隣で、マオがピクリと獣耳を小さく動かしていた。



#小説 #連載小説 #ファンタジー小説 #小説連載中 #勇者と魔王と聖女は生きたい

よろしければサポートよろしくお願いします😊 さらに頑張れる励みになります✨