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勇者と魔王と聖女は生きたい【31】|連載小説
部屋に連れて行くと、ティアは服もそのままベッドに倒れ込んだ。
「ティア、大丈夫?」
「……」
応えもしないティアに、僕とマオは顔を見合わせた。一体、どうしたんだろうか。この様子になる前までは元気に食事をしていたというのに。
「ごめんなさい……気分が、悪くて……」
「そっか、欲しいものがあったら言ってね」
「……」
「……1人になりたいか?」
「……ごめんなさい」
マオは仕方なさそうに肩を竦めて、隣のベッドから掛け布団を掴んでティアに放った。
ばさり、と頭も含めて全身隠れる。
「私とウェルで買い出しに行っている。何かあったら犬笛を吹け。それぐらいはできるだろう?」
「……はい」
微かに聞こえた返事は震えていた。
本当に大丈夫か不安になったが、1人になりたい彼女にこれ以上負担をかけるわけにもいかず、僕とマオは後ろ髪引かれる思いで廊下を歩く。
「……ティア、どうしたんだろう」
「さてな。いくつか想像はつくが分からん」
「いくつかって?」
「うーむ、確信がないものを言ってもな」
「そうだけど……」
当然ながら、部屋を出て2人になった最初の話題は、様子のおかしいティアのことだった。
あの様子は、慣れない旅から出た疲労からの体調不良とは、とてもじゃないが思えなかった。短い付き合いだけど、僕よりもずっと未来に希望を抱いているティアは、精神的には僕よりも強い人なのだと思っていたのだ。
だが、今のティアは精神的に何かに参っている。
何に、かは僕には到底想像もつかなかったけれど。
「話してくれるまで待つしかあるまい」
「話して、くれるのかな」
「さて。そもそも、何を言われても受け入れる準備はできているのか?」
「え?」
「アレであやつは高名な聖女だぞ。聖女が抱え込む問題。話す側も、聞く側も、相応の覚悟がいると思わんか?」
「聖女が、抱える問題」
ゴクリ、と僕は息を飲む。
旅をするにつれて、普通の少女として扱っていたが、彼女はこの世界で誰もが知る聖女なのだ。彼女が抱える問題が、僕程度に聞く価値はあるのだろうか。
僕は、ティアに何を言われても、応えれるだろうか。
女神はもう、応え方を教えてくれないというのに。
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