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勇者と魔王と聖女は生きたい【67】|連載小説

「来たな」

「マオ?」

ポツリと呟いた言葉を拾った僕は、首を傾げた。
でもマオはいつになく真剣な顔をして、僕と顔を合わせる。

「エルの言う通り、悪いことは言わん。逃げに徹しろ」

「え?」

「だが、私と出会った頃より、お主は確実に強くなっている。 胸を借りるつもりで全力で行け」

「何を……」

「大丈夫だ、危なくなったら私がなんとかする。そうだな、辺りが暗くなったら合図だ。すぐに1秒だけ目を瞑れ。敵前で不安だろうが、私を信じろ」

早口でまくし立てるように言うマオに、僕は何も言えないまま、ソレが現れた。

「こんにちは、勇者」

剣を片手に現れたソレ。
ただただ、恐ろしい存在だった。
怖気立つ重い空気を発しているソレに、直視すらできず、心が恐怖で一色に染まり、体に力が入らず、腰を抜かしそうになった。

「だいじょうぶだ」

トンっと背中が暖かい手で叩かれた。マオだ。
マオの手と、声のおかげで、恐怖は一掃される。

「息をしろ」

「ふ…はっ…はっ……」

言われるまで、息を止めていたことに気付かなかった。

「だいじょうぶだ」

「……うん」

改めて、ソレを見る。今度は直視できた。
ソレは、銀髪に金色の目をした青年の人型魔族だった。


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