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勇者と魔王と聖女は生きたい【84】|連載小説

「"どこの世も女神の姿を残したがるのは一緒"、ね」

僕とティアの話を聞いて、エルが顎に手を当てて思案する。
僕らとしては、不思議だな、と思って終わってしまったのだが、彼女にとっては違ったらしい。

「城にある壁画、それよりも古い壁画……本来なら原作を教会が保存するはず。なのに遺跡に放置する意味は?」

ブツブツと呟きだす。

「細部が異なるということは別物?製作者が違う?制作した年代が見るからに差があり、城にあるよりもずっと古い……ずっとってどれくらいかしら?十年単位では素人で分かるほど劣化しないわよね。百年?千年?そして師匠のところにも同じような壁画が存在する?どこの世も女神の姿を残したがる、ということは同じような壁画。"どこの世も"?」

「エル?」

「……千年ってキーワード、他にどこかで聞いた気が?」

自分の考えに没頭する彼女の邪魔ができず、僕らとイリヤ様で困った顔で見合す。

「女神が降臨する壁画、制作した年代が異なるのに同じになる……どこの世も。降臨する……滅びかけた人間の前に……――」

そこでエルの呟きが途絶えた。
難しい顔をしていたのに、何か閃いたように顔を輝かせていた。

「これ、師匠の"宿題"の答えだわ!」

「宿題?」

「確か、千歳を超えた精霊が人に会いたくなくなる理由だっけ?」

壁画の話をしていたのに、どうしてそこで精霊の話になるのだろう?
話に全く付いて行けない僕たちを置いてけぼりに、さらに混乱する言葉を続けた。

「私、その遺跡の壁画を見に行きたい!!」

どひぇーと変な声を上げた。


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