勇者と魔王と聖女は生きたい【86】|連載小説
顔色が悪くなり、なんとも言えない顔をしたイリヤ様の案内で通された部屋のベッドに転がる。
エルとティアは隣の部屋に案内されたので、僕一人だ。いや、ベッドの脇には丸くなって寝るアイシャがいる。
「マオ、今日は遅いなぁ」
ベッドの上から、ぐりぐりとアイシャの頭を撫でる。
チラリ、とアイシャが目を開けて見上げてきたが、また目を閉じた。今は遊ぶよりも、眠気が勝っているらしい。
「…………マオ」
マオがアイシャの体を借りて顕現しなければ、僕たちから会う術もコンタクトを取る術もない。何か、あったのかも確認しようがない状況に不安を覚えた。
「…………」
いや、僕だけはマオに会う術はある。
僕自ら、"マオの封印されている場所"に赴けばいいのだから。
僕は、僕だけが、マオの体の在り処を知っている。
「…………」
会いに行って。
それから、封印を解いてあげれば、一緒にいられる。
「………そうだ、もうマオを封印している意味はないんだ」
マオの言うことは正しかったのだから、封印をする意味はもうない。
「次にマオが来たら、提案しよう。お前も、ご主人に直接会いたいよな」
寝ているアイシャを抱き上げる。言葉の意味が分かるのだろうか、元気に尻尾を振って嬉しさを表していた。
「嬉しいよな。僕も、嬉しいよ」
マオは、"自分の言葉が正しくなかった場合は封印されている私を殺しに来い"、"封印されている間は無防備だから"と言っていたのだから、もう封印は解いてもいいだろう。
「――――……あ」
"封印されている間は無防備"という言葉が蘇る。
不安で、胸が押しつぶされそうな気持ちになった。
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