勇者と魔王と聖女は生きたい【79】|連載小説
すごい人たちだった。
魔物が哀れに感じるほどの、怒涛の勢い。
笑いながら魔物の群れを嬲る彼の姿に、戦闘狂の教会の追手の男が頭に浮かんで消えた。
「よぉ、兄ちゃん!ここら辺じゃ見ない面…ツラ?仮面?まぁいいか、つえーじゃねーか!」
「は、はは……いや、それほどでもないです」
その男は、戦闘が終わると僕に歩み寄って、笑いながらバシバシと僕の背中を叩く。めちゃくちゃ痛い。
「おーい!お前も、大丈夫かー!?」
僕の相手もほどほどに、馬車の方へと歩み寄っていく男の背中を見送る。
入れ替わりにエルが僕の元へ歩み寄って来た。
「知り合いかしら?」
「そうみたいだね」
馬車の主と知り合いらしい。
その男は、馬車の中に隠れていた人と話している様子だった。
唯一怪我をしたのは、馬車の護衛の一人だけという結果に、ホッと胸をなでおろす。
「いや、ホッともしていられないのか」
この人たちは、"女神の預言にとって"助かる人たちだったのだろうか?
"女神の預言にとって"死ぬ定めだったとしたら、僕たちのせいで"擬い物"になってしまったかもしれない。
僕は女神の預言が見える、ティアの姿を探した。
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