勇者と魔王と聖女は生きたい【101】|連載小説
幼い頃に森の奥深くで親に捨てられて、泣くしかできなかった私を見つけたのは魔王様だった。
――……何年経っても覚えている。魔王様は、私の命の恩人なのだから。
最初は驚いた顔をしていたけれど、すぐに膝をついて、視線を合わせてくれて。「マガイモノ、か」と悲しそうな顔をした。
けれどすぐに手を取ってくれて、それから、それから……
魔王城についたら、猛反対するルーファウス様に会って、それから、それから……
義理の娘として可愛がってくれる魔王様と、やっぱり敵意を向けるルーファウス様がいて、それから、それから……
「――、――……あれ?」
――……それから?
「――――、そこに勇者がいるのか、良い情報を得た」
「……え?」
なんだか、記憶が曖昧だった。
ガジュマ様は何か納得したように頷いている。
「ニンゲンも少しは役に立つな」
何か納得するように頷いたガジュマ様を茫然と見上げる。
私は、過去を思い出しているうちに、何かを言ってしまったのだろうか。
過去の思い出に集中しすぎて、曖昧だった。
「ルーファウスを倒せなかった勇者を倒せば、次の魔王は俺だ」
そう言って去るガジュマ様を見送ることしかできなかった。
「……私、何を考えてたんだろう?」
首を傾げる。
何か違和感があったのだけれど、きっと疲れていたのだろう。
ルーファウス様の部屋の扉を名残惜しく見て、自分の部屋に戻るためにその場を離れた。
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