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勇者と魔王と聖女は生きたい【63】|連載小説

僕たちの旅は、改めてエルを加えても変わらなかった。
日中は次の町へ向かうために歩き、時々マオの魔法講義、マオの土人形による僕の修行、ティアの防御のための修行、夜になれば野宿あるいは町についていれば宿屋で休むというルーティンができている。
そこに、エルが加わっても、マオの魔法講義に参加者が増えるだけなのだ。今は土人形による僕の修行の時間だ。

「魔素が、意思の持つ精霊……」

僕の修行の様子をみているマオの隣で、難しい顔をしたエルが呟く。
人間にとって常識を覆すような話だ。僕たち人間にとって魔法の基となる魔素はモノ。そこに意思など一つもない。しかし、魔族にとって…いや、事実、魔素とは意思を持っていたのだ。

「信じられぬのも分かるがな」

「いえ、あの土人形の動き。とても師匠が1つ1つ動作を指示しているとは思えない。精霊がその場で動かしていると思えば納得だわ」

「ふむ。理解力があるのは結構。だが……精霊に、ひいては人に対して頼み方が下っっっ手くそすぎて私の教えが身になっていないのがなぁ」

「うっ!わ、悪かったですね!頼み方が下手くそで!!」

"下手くそ"のところを随分と力を入れたが、マオがそう言いたくなる気持ちも分かる。
僕のかつてのパーティーの中で、最も魔法に優れたエルだったのだが……。

「どうして!私の言うこと聞いてくれないの!?」

「だから、無理に精霊を従わせるのではない」

「えぇ~~!?わかんない!どう違うの!!」

僕とティアよりもずっと、ずっっっっと問題児だった。


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