勇者と魔王と聖女は生きたい【102】|連載小説
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「頭が痛いわ」
「同じく」
「ですね」
案内してもらった図書室で僕たちは一息ついた。
朝食では暖かいスープを飲んで、図書室で僕たち三人と一匹になったことから安心したのだろう、ティアの顔色も少しだけ元に戻っていた。
「どう考えても解決できない問題と、聞けば解決できるけど聞けない問題……もどかしくて嫌になっちゃうわ」
「聞けば解決できるけど聞けない問題……マオ様ですね」
エルが肩を竦めて言った言葉に、ティアは重々しく頷く。
僕もまた大きく溜息を吐いた。
「マオ、なんで出てこないんだろう」
「それもまた"どう考えても解決できない問題"なのよね」
「あ~~~」
頭が痛い。
僕たちの苦悩も知らず、アイシャはクンクンと本棚のにおいを嗅いでいた。尻尾を振って、部屋の中をあっちこっちへ動く。
つい三人でアイシャの動きを目で追っていた。
「……このままじゃ埒が明かないし、少しまとめましょうか。"今私たちが抱えている問題"とは?」
「まず、マオ様が出てこない件ですね」
「そうね。1日に1回はアイシャとマオ様が変わっていたのに、今回は2日経っても変わらない。こんなことはじめてよね?」
エルの確認に僕とティアが頷く。
そう、今までは毎日僕やティアの様子を見に来ていたのだ。短いときだと10分やそこらだったが、それでも必ず毎日顔を見せに来て、次の指示をしてくれていた。
はじめてのケースで、僕らにはどうしようもない問題だ。
「あと、次の目的地がわからない件もあるよね。このまま街に滞在してもいいのかなぁ」
「そもそも私、旅の目的もゴールがわからないのよね」
「教会の追手から逃げるという目的はありましたよ?」
「でも一生逃げ続けるわけにもいかないでしょ?マオ様なら、なにか考えがあるような気がするけれど」
「たしかに」
無闇に逃げ続けるのはマオらしくない。
おそらく、何れかの考えがあり、それが旅のゴールのはずだった。今は、僕らで考えても解決が見えてこない問題である。
「それと、イリヤ様と傭兵たちの女神の預言がない件も問題ね。イリヤ様の預言関連は特殊すぎるから、イリヤ様と傭兵たちで2つに分けたほうがよさそうだけれど」
「壁画の件は?」
「……まぁ、その件もそうね。それで、今抱えている問題は合計5つってとこかしら」
合計5つの問題。
こう冷静になって考えてみると、5つ中3つはマオがいてくれば解決する。
「……私たちが、如何にマオ様に頼りきっていたのかが痛感しますね」
「……あんたら、よく今まで生きてこれてたわよね」
「は、ははは……」
エルの呆れた視線に、乾いた笑いしか返せなかった。
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