勇者と魔王と聖女は生きたい【69】|連載小説
剣筋が目で追える、程度だった。
ルーファウスが繰り出す攻撃を、なんとか目で追えて、なんとか剣で受け止めて、なんとか防御をするだけ。
「ウッ」
「…………」
呻く僕に対して、ルーファウスは無言、無表情だった。息遣いすら感じない。顔が整っている分、まるで人形を相手にしているみたいだ。
煽るなり、恨みつらみを込めて話してくるとばかり思っていたが、ただ淡々と殺意が込められた剣を向けられる。正直、めちゃくちゃ怖い。
「うわぁぁぁ!!」
対する僕は、情けなく声を上げる。そうでもしないと、息ができないからだ。少しでも気が緩むとバッサリと斬り捨てられそうで…実際に斬り捨てられるだろう状況に、息もまともにできないのだ。酸欠でクラクラするのを堪えるように、僕は叫ぶ。
斬撃。受け止める。斬撃。受け止める。
終わりが全く見えない。
「………ハァ」
ずっと無言だったルーファウスが、大きくため息を吐いた。
「その程度ですか」
「…、………!」
僕は、息が詰まって言葉を返せない。
「この程度の実力、魔王様が負けるはずがない。一体、どんな卑怯な手を使ったのだか」
「…………」
ルーファウスは、冷たい目を僕に向ける。
「もういい、死ね」
死の宣告。
その言葉の通り、いつの間にか僕の首にルーファウスの剣が迫っていた。
今までの攻撃は遊びだったのだろう、比じゃない速さだった。
防御が間に合わない。
「あ」
目の前が、暗くなった。
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