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勇者と魔王と聖女は生きたい【99】|連載小説

城主のいない、魔王城。
そこに戻るまで、何度も声をかけてもルーファウス様は上の空のままだった。

「あの、ルーファウス様?」

「…………」

パタン、と力なく、目の前で扉が閉じる。
正しくは、「ルーファウス様の自室に入るまで」だ。
結局、何も聞きだせなかった。

「…………」

一体、ルーファウス様はどうしたのだろう?
扉の横の壁に所在なく壁に寄りかかる。

――……勇者たちと戦うまでは、特に問題はなかったはずだ。
戦っている間も、勇者を圧倒していて。
ようやく倒せそうな時に、どうしてか目の前が暗くなったと思ったら、今度は目の前が光って。……その後には、もうルーファウス様はあの調子だった。

「暗くなった時に、何かあったとか?」

それ以外に考えられない。
だけれど暗くなった時に動揺してしまって、周りを気にする余裕がなかったのが悔やまれる。

「…………ルーファウス様、魔王様」

少し前の、魔王様の隣に立つルーファウス様の姿を思い出す。
私は、あの方たちが一緒にいる姿を見るのが、とても好きだった。
短い言葉で意思疎通ができて、魔族に珍しく信頼しあっている方たちだった。
喧嘩もしていることもあれば、仲良く笑い合っていたり、背中合わせに戦ったり、鍛錬をしたり。

魔王様は私にも見せない柔らかな顔をしていた。
ルーファウス様も他の者の前だと冷たい笑顔しか見せないのに、魔王様の前で朗らかに笑っていた。

――……魔王様にしか見せない笑顔は、もう二度と見れない。

「嗚呼、忌々しい勇者」

私たちが一体何をしたというのか。



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