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勇者と魔王と聖女は生きたい【36】|連載小説

真っ先に動いたのは高笑いをしてマオに狙いを定めた黒ずくめだった。
思わず、マオ達よりも近い位置にいた僕がその行動を妨げるために剣を構え、進行を妨げる。

「邪魔だぁ!!マオと俺の戦いに水を差すなァ!」

「えぇぇ、コイツ、なんなの!?」

狙いはティアじゃないのか?
いや、コイツ以外の黒装束の男達は男に戸惑いつつも、ティアへと視線が集中している。前情報通り、狙いはティア……聖女なのだろうけれど。

「どうする!?」

「あ、お主の方で相手を頼む」

「……、そのこころは」

「うん。お主も目を付けられたらよい」

「おい」

面倒な男の予感がするぞ、と見れば一目瞭然のことを言うマオに頭を抱えたくなった。面倒なのはこちらもごめんなのに。
完全にバックアップ体制でティアの前に待機するマオに僕は肩を竦めた。

「よそ見をするァ!!」

怒声をあげながら双剣を連続で斬りつけて来る。
僕は剣で防いでいる間に、周りの黒装束の男たちが通り過ぎようとする。

「ハッ」

マオの嘲笑。
瞬間、黒装束の男たちの進行を遮るように炎の壁が燃え広がった。とても、炎に突っ込んでショートカットしようとは考えられないほど、ゴォゴォと燃え盛る高い炎の壁だ。

「ソヤツを倒したら、この炎を消して私が相手をしてやろう。何事も順番よ、順番」

「……マオ様、今、詠唱していないのでは……」

「はっはは!ほれ、がんばれがんばれ」

詠唱が聞こえなかっただけだと思ったけど……0コンマで強力な魔法を放てるという事実に僕はゾッとした。
ますます、マオに勝てる未来はない。
ティアの追及の言葉に、マオが笑い声を上げながら声援の言葉を送ってくる。とはいえ、後ろを気にしなくても良くなったのは僥倖だった。

「ここからは本気で行かせてもらうよ」

魔王の足元にも及ばないとはいえ、勇者という肩書をもらった身なのだからこれぐらい負けるわけにはいかない。
油断せずに、相手を見据えた。



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