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勇者と魔王と聖女は生きたい【74】|連載小説

ルーファウスを退けてから、僕たちの旅は問題なく続いた。
時々、教会からの追手を撃退したけれど、僕たちにかかれば問題といえるものはない。

「すっかり、エルの存在も教会に知られてしまいましたね。大丈夫でしょうか?」

「別に。教会とかどうでもいいもの」

ティアの言葉に、エルは肩を竦めて軽い調子で言う。
エルの一番は預言よりも魔法だ。本当に気にしない姿は素直に尊敬してしまう。僕ならきっと、そうはいかないだろう。

「アイツも、相変わらず面子にいたよね」

「アイツって、一人だけ騒がしいやつ?知り合い?」

教会の追手の中に、戦闘好きな男が一人混ざっている。
女神の預言があるというのに、預言を捨てて教会の暗殺者をしている男。
エルの言葉に、僕はすぐさま首を振った。

「まさか。ただ強いやつと戦いたいってだけの変人だよ」

「あの方はウェル様もすっかり気に入ってしまいましたわねぇ」

ティアがのんびりとした声で言うのを、僕は眉を寄せて聞き流した。
勘弁してほしい。
あんな、贅沢にも女神の預言がありながらも預言通りに生きない男なんかに。

「……今日はマオ様、遅いですね」

僕の苛立ちを察したのか、ティアがそう話題を変換した。
その視線は、軽い足取りで先を進む黒犬のアイシャに向いていた。
今日はまだマオは来ていない。

「そうだね。マオが、アイシャの体を借りてばかりじゃ申し訳ないから、とは言ってたから…今日は昼過ぎになるんじゃないかなぁ」

「マオ様って、アイシャ様の体を借りていない時ってどこにいらっしゃるんでしょうか?」

「え、体に戻ってるんだと思う」

「体」

「今は、封印されてるけれど……」

「封印!」

そうだ、今のマオの体は辺境の地に封印されている。
僕の信頼を得るために、誠意を見せるために、と。

だた、もう、十分だ。
マオを信頼するには十分の言動をもらった。

封印を解かなければいけない。

早く、マオの封印を解いてあげたい。

次にマオが来た時に、その話をしなければ。
そう考えたところで、アイシャが「わん!」と一吠えした。



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