勇者と魔王と聖女は生きたい【71】|連載小説
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次の日の朝。
「アレは、なんだったんだ?」
ギリギリの生死のやり取りから、私たちはルーファウス達と戦った場から離れた地点で、マオ様からの背中から降ろされました。
逃げられた安堵、死闘の疲れ、諸々の疲労が貯まり、飲食も適当に、私たちは会話もなくグッタリと眠りにつきました。特にウェル様は、死んだように眠っていたようです。
ようやく次の朝になって、お互いに顔を合わせた時に、ウェル様が首を傾げつつ、誰にともなく問いました。
「私も知らないわ。なんだったの?」
ウェル様に問いに真っ先に応えたのは、エル。
エルはあの時、ルーファウスと共にいたアリスを魔法で牽制していたので、何も分からないのは当然です。
「えーっと、マオ様に指導されながら私がやった……の、だとは思うのですが……私もわからなくて……」
「分からないの?一瞬、暗くなって明るくなっていたよね。明るくなったのは、火の魔法?」
「あれは火の魔法ではないわ。あれだけの光なら、高熱のはずなのに一切感じられなかった。それに、火の魔法を出してすぐに消しさる芸当なんてできるはずが、……師匠ならできるのかしら?」
「あー」
「あー」
エルの言葉に、ウェル様と一緒に遠い目をしてしまいました。
マオ様なら、なんでもありえそうです。魔法の知識は、マオ様の右に出る方なんていないのだから。
「でも、やったのはティアなんでしょ?ティアの魔法適正ってそもそも……」
「はい。土だけ、のはずなのですが……」
「え。あんた土だけなの」
絶句するエルはともかく。
答えを知っているマオへと、全員の視線が集中する。
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