勇者と魔王と聖女は生きたい【21】|連載小説
「へばっていないで次じゃ次」
自信喪失している僕に容赦することなく、マオは僕のお尻を蹴る。
痛くはないが心には響くので止めてほしい。
「次って?」
「守りの次は攻めに決まっておろう」
「守りだけでも私、希望が出てきたのですが……土属性で攻め、です?想像できません」
「ま、百聞は一見に如かずと言うだろう。……そうだ、ついでにお主、今からずっと仮面をつけよ」
「え?仮面を?」
「仮面をした限られた視界での戦闘に慣れるチャンスだろう」
マオはそう言いながら、荷物の中から仮面を取り出して放り投げてくる。
もちろん、昨日つけていた、ひよこのお面ではない。
3人で選んで購入しなおした、顔の上を隠す程度の大きさで、しっかりとした素材でできた灰色の仮面である。
「うわ、結構視界を遮るなぁ」
「うむ。慣れるに越したことはなかろう」
ティアを自分の後ろに下がらせて、マオはしゃがみこんで土に触れる。魔力を土に流し込んでいるようだった。
「"土よ、強さ8、10分の特訓で頼む"」
「強さ8ってなに!?」
「自分の特訓に使い慣れてるから、ショートカットなんてお手の物よ」
思わず声を上げてしまった僕だけれど、マオは飄々とした態度のまま立ち上がった。その彼女の前に、ポコリと土が小さく盛り上がった。
その盛り上がりがどんどんと大きくなり、形が変わっていく。
最初は人のような頭、肩、体、両腕と形になっていき、最後には2足で立つ土人形が出来上がったのだった。手には土で出来た剣を持ち、顔はのっぺりとしている。
「えぇ……なにこれ?」
「特訓用の土人形。ま、戦闘にも使えるが、使ったことはないな」
自分の手でやった方が早いし、と小さく呟いた。
確かにマオほどの実力者であれば魔法で土人形を作る合間に、勇者である僕の一人や二人を倒していることだろう。冗談でもなく本気で思う。
「これと、戦えばいいのか?」
「うむ。気を付けよ、土の硬さは先ほどと同じ。強さ8とは私の実力の8割分。お主と戦った時と同じだ」
「そ、それを早く言え!!」
慌てて剣を抜くと、その土人形が突進してくる。それこそ、僕が追い切れない速さで。
「どわぁぁぁ!!」
情けなく僕は声を上げながら応戦した。
今日2度目の、僕の勇者としての立場がボロボロになったのだった。
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