勇者と魔王と聖女は生きたい【27】|連載小説
次の日になり、僕とティアとアイシャで黙々と速足で進んだ。
昨日の惨状からなるべく早く離れたい気持ちが強かった。アイシャは何も知らないからか、尻尾を振りながら軽い足取りで先行していたのが唯一の癒しだった。
「魔法が怖いです」
「分かるけど」
休憩に入ってすぐのティアの言葉に、僕は顔を反らした。
魔法を習得する前から苦手意識を持たせてしまった責任は、確実に僕にある。でもまさか、魔素への頼り方を変えるだけで、あんな結果が待っているとは誰も思わないだろう。
「害がない魔法から慣れるしかあるまい」
周囲の草原を駆け回っていたアイシャが戻ってきたと思ったら、言葉を放った。マオが戻ってきたらしい。僕たちの前まで来てから、人型へと変じた。
「土の魔法で害がないと言うとなんです?」
ティアの疑問に、僕は当たり障りのない本来の土の魔法の使い方を口にする。
「地面に小さい穴を空けるとか」
「それ、底がない穴にはなりませんよね?」
「…………」
「え、うそでしょう?なるんですか?」
マオが顔を反らした。
……なるんだ。
「小さな小山を作るとか……」
「それ、立派な山ができたりしませんよね?」
「…………」
「まほうこわい」
黙るマオにティアは頭を抱えた。
土の魔法は本来は無害のはずなのに、どうしてこんなに悩まなければいけないんだろう……。
「ま、まぁ、実際に魔法を放つのではなく、まずは精霊に魔素を与えるところまでやってみると良いのではないか?」
「精霊に魔素を?」
「うむ。日頃から精霊と交流をするのも大事だ。やってみよ」
「えーと、どのように?」
「ティア、魔素の適性を調べた時と同じようにまずは手のひらに集中するといいよ」
「むぅ」
「心の中で声をかけるといいぞ。最初だから挨拶でも可だ」
「むむむ」
集中するティアを見守るマオと僕だが、次第にマオが分かりやすいぐらいに表情をなくした。
日頃、余裕綽々でふてぶてしい態度の人がスンッと真顔になるのを見て、僕もまた事態が分からないままゾッとした。おそらく、ゾッとした感覚は間違いではないのだろう。
「……お主も、しばらく私がいる時以外は魔法禁止」
「えっ」
「聖女と勇者どうなってんの。こわ」
「えっ、ちょ、マオ様!?私一体何をしたんです!?」
「……まほうこわい、まほうこわい」
ティアの言葉が移ったが、僕の心からの言葉だった。
魔法って……怖いんだなぁ。
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