勇者と魔王と聖女は生きたい【70】|連載小説
――……辺りが暗くなったら合図だ。すぐに1秒だけ目を瞑れ。敵前で不安だろうが、私を信じろ。
目の前が暗くなった時、マオの言葉を思い出したのは奇跡だったと思う。
その言葉を信じて、1秒だけ目を瞑る。その時、目の前が白くなった。
「……何!?」
ルーファウスが僕から離れる気配。
その一瞬後、首の後ろを何かが掴み、グイッと力任せに引っ張られて僕の体が浮いた。
「うわぁ!?」
落下した先は、もふっとした毛皮。
「よし。振り落とされるなよ」
「え!?」
状況を把握する間もなく、そんな言葉と共に動き出す地面に、慌てて地面を掴む…いや、毛の束を掴んだのか?
顔に風が叩きつけるように当たる中、必死に目を開けて状況を確認する。
横には僕と同じようにティアとエルがいる。僕たちは何かに乗って、すごいスピードで移動している。何かとは…魔犬化かつ巨大化したマオだ。
「マオ!?」
「まず離脱しよう。話はそれからだ」
3人の人間を乗せているとは思えない速さで、マオは走り続ける。
ルーファウス達も追いつけないだろう。
僕たちは、戦線から離脱したのだ。
「まおう、さま?」
だから、途方に暮れたような、小さな呟きに気づくことはなかった。
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