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勇者と魔王と聖女は生きたい【68】|連載小説

「驚いた、動けるんですか」

ソレは恐ろしく顔が整った青年だった。
僕は彼の姿を覚えている。
僕が魔王を倒したという態度で魔王の間から出てきた時に、真っ先に魔王の元へと駆けだした姿を。

「私たちの魔王様を倒したのですから、そうでなくては」

驚き感心した様子から、当然だろうと頷く。
"動ける"?とんでもない。一挙一動、目が離せなかったし、動けない。マオのおかげで、情けなく腰を抜かすことは避けれたが、正直言うと今も気を抜いたら気を失いそうだった。

「安心しろ。私が絶対にお前を死なせない」

かろうじて動けるのは、後ろにいるマオのおかげでしかない。マオの言葉に安心して落ち着いてくる。
僕よりもこの空気に慣れていない、ティアは大丈夫だろうか?エルは?
ようやく仲間の存在に意識を割けたが、やはり、チラリと後ろへ目をやる余裕がない。どうなっているのだろう?

「エルは顔色が悪いが大丈夫だ。ティアは、怪しいな。意識を飛ばしかけている」

そんな僕の気持ちを汲んだのか、マオが後ろから仲間の様子を説明してくれた。
今の僕が彼女たちに何かできるわけではないが、状況を知ることで少し気が落ち着く。

「ティアのことは任せろ。後ろは気にするな。お前はルーファウスに集中しろ」

「うん」

大丈夫だ。きっと大丈夫。
魔王であるマオと戦った時よりもプレッシャーが強い。マオがどれだけ手加減してくれていたのが分かるが、それでもきっと大丈夫だ。
だって、さっき、マオは言ってくれた。

―――…私と出会った頃より、お主は確実に強くなっている。

嬉しかった。マオに認められていることに。
マオの言葉に、信頼に応えたい。
僕は心を奮い立たせて、一歩、ルーファウスへと踏み出した。

「それから、ルーファウスは吸血鬼だから血を吸われるなよ。血から記憶を読むから私の存在がバレるし、普通に出血多量で死ぬ」

「この戦う直前にハードルを上げて欲しくなかったなぁ」

吸血鬼って魔族の中でも再生力がバカ高い種族じゃないか。



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