勇者と魔王と聖女は生きたい【89】|連載小説
「え?」
「あ、いや、その、僕が聞いたところで解決にはならないだろうけど、何か助けになればいいなって思って、ごめん、興味本位とかじゃないんだ」
きょとりと目を瞬かせたティアに、なんだか恥ずかしいというか、気まずくなった僕は慌てて長々と言い訳を口にする。
解決する自信は全くと言っていいほどにない。
だというのにティアに聞いてしまったのがすごく気まずかった。
「ふふっ、いいえ、気遣ってくれてありがとうございます。その気持ちがうれしいです」
「そ、そっか」
「はい」
にっこりと嬉しそうに笑うティアを見て、僕は意味もなく頬を指でかいて視線を逸らす。
ちょうど視線の先にいたアイシャと目が合った。なんだか呆れている気がした。
「そう、そうですね。マオ様を待たずに、ウェル様やエルに相談するべきでした。とても、大事なことに気づいてはいたんです。でも、つい、私はマオ様を待ってしまって……」
「いや、仕方ないよ。いつだって答えをくれるのはマオだ」
「……"答えをくれる"。そうですね。でも、女神様の"答え"と違って、マオ様はヒントをくれて、自分で考えさせらて、自分の中の答えを見つけさせられますけれど」
「……自分の中の、答え」
「女神様よりずっとずっと厳しいです。けど、私は自分で答えを見つける、今が好きです」
ティアの言葉に、確かに、と思う。
僕は考えるのが苦手だ。女神の予言があったころは、自分が考える必要はなく毎日を生きていけて、悩みなんてなくて、後悔なんてなくて、ずっとずっと楽だった。
けど、と思う。
「僕も、今のほうが好きだなぁ」
悩みながらも、後悔しながらも。
こうやって自分で考えて行動して、手探りで生きるのは、悪くはなかった。
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