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勇者と魔王と聖女は生きたい【30】|連載小説

「お水のおかわりはいかがですか?」

宿屋を経営をする人達の子どもなのだろう、十歳ぐらいの小さな女の子がそう声をかけてきた。頭の横にちょんっと茶色の髪を結ってツインテールにしている、ニコニコと笑っている可愛らしい女の子だった。三人とも水のお代わりのお願いをする。

「のう、娘。ここの特産品は知っておるか?」

「知ってます!赤ワインは大人に大人気!子どもにはぶどうのパウンドケーキが好まれています!でも、ブドウそのままもおいしいのでオススメです!」

「ほう。後で買ってみよう。のう、ウェルよ」

「はいはい。よく甘い物ばかり食べられるね」

マオの疑問に、口ごもることもなくスラスラと答えが返ってきた。
よく聞かれる質問なのだろう。エッヘンと自信満々に笑う女の子。マオがお礼を言っている傍らで。

「……あ」

ティアが息を飲んで、顔色を青くさせていることに気付いた。

「ティア?どうかした?」

「あ、いえ……いえ、その……」

言葉を探している様子で、尋常ではない量の汗が流し始めた。
けれども視線は女の子に固定したまま、はくはくと口を開閉させる。

「えっ、大丈夫!?」

「おねーちゃん、具合悪いの?」

「あ……あぁ……」

そのやり取りを見ていた女の子が心配そうにティアに声をかける。
それでも、言葉が見つからない様子で、ついにはティアはテーブルに顔を突っ伏してしまった。

「ティア!?」

慌てて立ち上がる僕と、部屋の準備をする、と駆け出す女の子。

「…………」

マオだけは、冷静に、けども、どこか考える様子でパクリと最後のパフェの一口を食べていたのだった。



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