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勇者と魔王と聖女は生きたい【64】|連載小説

「ま、人への頼み方については、またティアに投げるとして」

「え」

「他の方法として、年かさの精霊と仲良くなっておく方法もある。若い精霊より話が分かる者が多いし、より強力な魔法を使ってもらえるぞ。私の土人形がまさにそれだな」

突然話を振られたティアが声を上げるのもスルーして、マオが魔法のレクチャーを続ける。

「年かさの精霊?」

「そうだ。若い精霊と違って、あまりうろついていないからなかなか会えないが、会えた時は口説き落とせ。力になってくれるだろう」

「くどきおとす」

精霊へ協力を頼むことと、年かさの精霊を口説き落とすこと。
どちらが難易度が高いかといわれると、マオがもう一つの方法として提案した後者だろう。無茶ぶりに絶句するエルに、マオが大きな声で笑う。
難易度が高いことを提案していることは分かっているらしい。

「精霊さんにも年齢があるのですねぇ」

「ん?それはそうだ、あいつらも生きているからな」

そんな二人に目もくれず、ティアはぽやんとした雰囲気のまま自分が思ったことを言った。最近はエルの件でピリピリしていたが、久々の柔らかい雰囲気をしている。

「生まれたての精霊もいるということですよね。会ってみたいものです」

「生まれたて……精霊ってどうやって生まれるのかしら?」

「私も精霊に聞いた話だが、自然界には力のたまり場があるらしい。その場で長い年月をかけて力が高まった時にポコンッと生れ落ちるそうだ」

「ぽこん!」

「へ~、交配で増えるわけじゃないのね。メスオスもないのか、力のたまり場がどんなところなのか……知りたいことがたくさんだわ!」

「そのためにも、お主は精霊と語れるようにならなければいかんのぅ」

「うっ!げ、現実に戻さないで下さいよ、師匠……」

目をキラキラさせはじめたエルに、マオが現実に突き戻す。
クスクスと笑うティアは、「そういえば」と口にした。

「強力な魔法を使うには、年を重ねた精霊さんに協力してもらうことなんですよね?年齢を重ねることで精霊さんは強くなるのですか?」

「基本的にはそうだな」

「では、精霊さんって何歳まで生きれるのでしょうか?」

「たしかに……人間の平均寿命は60歳前後でしょ?精霊ってどれくらい生きるのかしら。そもそも精霊に死って概念がある?」

「あー……そうだなぁ」

少し間が空く。
珍しくどう答えるべきか考えている様子だった。

「……基本、精霊たちに死の概念はない」

「へ~!一番上の精霊って何歳なんでしょうか?マオ様は会ったことがあるのですか?」

「いや、一番上は分からんが……」

また、少し間が空く。

「私が出会った中で一番年かさの精霊は、おおよそ二千歳だった」

「え」

「に、二千……!?」

ティアとエルが途方もない数字に絶句する。

「だが、さらに上はいる。いるが、会うことはできないだろう。私が二千年もの歳月を生きた精霊に出会ったのも、偶然に偶然が重なっただけだ。お主たちが会えるとしたら……千歳未満の精霊だろうなぁ」

「それは、どうして……」


「千歳を超えた精霊は、総じて生き物に会いたくなくなるからだ」




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