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勇者と魔王と聖女は生きたい【87】|連載小説

次の日の朝早く。

「ふわぁ……ねむい」

不安になって眠れないまま一夜を超えた僕は、欠伸を隠しもせずアイシャと廊下を歩いていた。
こちらの気持ちを知らずに、呑気に僕の前を駆けるアイシャは昨日の夜はぐっすりと眠っていた。

「ご主人様が行方知れずだっていうのに、お前は呑気だなぁ」

僕の呟きを聞いてアイシャは耳を動かしながら後ろを振り返るも、すぐに駆けだした。

「……まったく」

なんとなくアイシャの後ろをついていくと、昨日の話題になっていた壁画にたどり着いた。壁画の下をフンフンと匂いを嗅ぐアイシャの姿を見守る。

「お前もこの壁画が気になるのか?」

当然ながら、応えはない。
壁画全体を見る。エルはこの壁画……と、僕たちの情報から、何かの答えを導き出したらしい。しかし、僕にはさっぱりだ。
眠れなかったから一夜かけて考えてみたけれど、思いつくものもない。

「あら、ウェル様。おはようございます」

「ティア。おはよう」

後ろから声をかけられて振り返る。そこにはティアが僕に歩み寄る姿があった。

「早いね」

「はい、ちょっと気になることがあったので……」

僕の隣に立って壁画全体を見るティアの姿。

「壁画の意味、分かった?」

「……さっぱりですね」

「だよね」

ティアも分からなかったことに、少しホッとした。


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