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勇者と魔王と聖女は生きたい【25】|連載小説

マオの人間に対するとんでもない誤解に、僕とティアは必死に否定した。
焦っている僕たちを冷めた目で見ていたマオは、肩を竦めた。

「まぁ、さっきのお主らの説明で誤解なのは分かった」

「よ、良かったです」

とんでもない誤解は解消されて、ホッと胸をなでおろした。
とはいえ、マオ以外の魔族たちの誤解は解けていないのだけれど……ひとまず、行動を共にするマオだけでも誤解が解けたのは助かった。

「魔素……精霊に意思があるから、マオ様は魔法を唱える時にあのような詠唱をしているのですね」

―――"土よ、強さ8、10分の特訓で頼む"。

ティアの言葉に、魔法を使う際のマオの言葉を思い出した。
対して、エルがよく使う魔法。

―――"炎の魔素よ、踊り狂え"。

強制力が強いのはエルの言葉だろう。けれど、精霊に意思があると思うと、それはとても間違っているように思えた。

「私たちだって、命令されてやるよりも、お願いされた方が気持ちいいだろう?精霊も同じだ。お願いした分、協力してくれる子が多くなり、その分だけ魔法は強力になる。こちらは魔素を渡すとはいえ、精霊に魔法として形にしてもらうのだから、お願いをするのは当然だろう」

「そう、ですよね」

「うん」

通りすがりの誰かに、"魔物を倒せ"と命令される自分を想像する。
勇者の僕は、危険な魔物の討伐に向かうけれども……気持ち良くはなかった。

「さっき、マオが"人間は単調で効率の悪い魔法を使う"って言っていたのは、それが理由なんだね」

「それだけではない。お主たちはその場その場で、言葉と一緒に頭の中で想像した魔法を精霊に伝えるだろう?だから単調だし、時間がかかる魔法にしかならん。だが、いつも精霊と意思を通じることで、こちらの言葉をくみ取ってくれるようにもなってくる。それがさっき説明したオート」

「あぁ……それで土人形をオートにするといいって」

「うむ。ま、精霊の常識とこちらの常識は違うから、慣れぬうちは完全オートはおすすめせんがな。伝え方を間違えて三日三晩、城を更地にするまで暴れたことがある」

注意はいるぞ、と遠い目をして言うマオにゾッとした。
オートって便利だけど……こわいな。



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