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勇者と魔王と聖女は生きたい【93】|連載小説

あーでもない、こーでもないと話し合った僕らだが、やはり結論や閃きが出てくるわけでもなく、情報の共有や自分の考えを話すだけで終わってしまった。

「でも、知恵を出し合うのはいいですね。エルにも話してみましょう」

「そうだね。きっと僕たちとは違う視点を持っているはずだ」

そろそろ朝食の時間だろう。
部屋に戻ろうと声を掛け合い、壁画の前から離れる。

「アイシャ、行きましょう?」

僕たちが離れても、壁画の前から動かないアイシャにティアが声をかける。
ようやく僕たちのもとに駆け寄ったアイシャを見てから、僕たちも再度歩き出した。

「でも、今のエルが話を聞いてくれるでしょうか……」

「あぁ、昨日もずっと騒いでいたなぁ……遺跡に行きたいって」

「双方の追手がありますし、道を逆に戻るのは危険そうですよね」

「双方ね……問題は、あっちなんだよなぁ」

人間側の追手と、魔族側の追手。
問題があるのは魔族側の追手だ。特にあの四天王の一人、ルーファウス。
前回は命からがら逃げることができたが、次はそううまくいかないだろう。

「でも、思っていたほど、次の襲撃はないんだよなぁ」

「そうですね。教会の者の方が何度かあるほどで……」

「あ、ティア」

「はい?」

廊下の角の向こうから気配がして、彼女の名前を呼んで話の続きを遮る。
少しもしないうちに、その曲がり角から歩いて姿を現したのは、イリヤ様と、教会の人間らしい男だった。
おはようございます、と朝の挨拶をしようと口を開きかけた時だった。

「……!!?」

こちらを認めたイリヤ様の顔が、驚愕に染まった。



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